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交渉術

2020/02/07(金)

事例:Win-Winでは不十分だ

 

From 安永周平

あるIT企業の社長の話です。その会社は新しいソフトウェアを開発し、それをある銀行に5年契約で売りました。その銀行の頭取は、そのソフトを高く評価してくれましたが、他の役員たちはあまり賛成していませんでした。

そして、契約を交わしてから1ヶ月ほど経った頃、頭取が交代しました。新しい頭取は、社長のもとを訪ねてきてこう言いました。「今回のソフトウェアの変更を、行内で進めていく自信がない。社内で大きな問題になっている。他の役員たちは反対しているし、私は新たに頭取に就任したばかりで無理には進められない」と。

この時、その会社はというと、財政的に厳しい状況に直面していました。法律的に言えば、その契約が有効であるのは明らかでした。しかし、社長はしばらく考えた末に、頭取に次のように話しました。

社長がとった行動とは?

「既に契約を結んでいただいておりますし、御行はこのソフトを導入するために当初の商品とサービスを買っています。しかし、この案件について納得されていないということも、私たちは理解しています。ですから、こうしましょう。契約を取り消し、頭金も返しましょう。そして、もし今後ソフトが必要になるようなことがあればぜひお声を掛けてください」

社長は、800万円ほどの契約を捨てたことになります。それは、彼にとって金銭的な自殺のようなものでした。しかし、それが正しい原則にもとづいているのなら、長期的には報われるはずだ…と信じていました。

そして3ヶ月後、その新しい頭取から社長のもとに電話がかかってきました。「銀行内のシステムを更新するので、御社と取引したい」と。そして、社長は2400万円ほどの契約書にサインしました。

Win-Winを考える際に大切なこと

さて、この話もまた僕が最近読み返している『7つの習慣』に載ってるエピソードですが…あなたはどう感じたでしょうか? すでにお分かりのように、これは「Win-Winの関係」が成立した事例です。ただ、単に「いい話聞いた」で終わるのではなく、僕らはこの話から何を学ぶべきでしょうか?

その1つの答えは、1回目の契約の際に社長が「No-Deal(取引しない)」の選択をしたことです。No-Deal とは、端的に言えば「双方が納得する案を見つけることができない時は、”合意しないことに合意する”」ということです。つまりは、取引しないということですね。

自分が不利になる条件、あるいは相手が損をするような状況では、期待もさせず契約も交わすべきではありません。経営者であれば、入社希望者の価値観や目的が自分たちと正反対であれば採用しないということですし、あなたのように GIVER という生き方を選ぶ人なら、相手が TAKER だと分かった時点で一緒に仕事はしないということです。

「取引しない」というカードを持つ

「取引しない」という選択肢を持っていれば、たとえば次のように正直に言うことができます。

「Win-Win以外はしたくないんです。私も勝って、あなたにも勝ってほしい。だから、あなたが満足しないまま、私だけが得をするのは嫌なんです。あなたが不満を感じ、私は信頼を失くしてしまいますから。逆に、あなたが思うようになったとしても、私が納得しないとあなたも釈然としないのではないでしょうか。」

「だから本当にWin-Winを考えましょう。十分に話し合い、そして最終的にWin-Winになるような案が出なければ、取引はしないでおきましょう。お互いに納得できない案でやっていくよりは、最初から取引しない方がいい。そうすれば、今後またお互いに協力する機会があるかもしれませんから」

双方が幻滅するよりずっといい

Win-Winの関係にならないまま、お互いに中途半端な期待を持ち、結果として双方が幻滅してしまってからそのことに気付く…こうなるよりは最初から取引しない方がいいでしょう。「与える人が与えられる」という僕らが共有する価値観も、相手が TAKER であれば、その期待は裏切られます。

もしあなたが見込み客と話をしていて、相手が「無料でやってよ」と言ってきたり、限界ギリギリまで価格を買い叩こうとしたり、のらりくらりと報酬の話をはぐらかしたりするようであれば、取引しない選択をするのが賢明でしょう。あなたが納得しないまま、契約を結んではいけないのです。

注)心理操作で解決しないこと

かといって、相手を心理操作して納得させるようなこともいけません。普段からそんな言動をしていると、あなたの信頼は失われていくでしょう。提案・交渉のスキルは重要ですが、決して悪用してはいけません。これは、ビジネスに限らずあらゆる人間関係で言えることです。

あなたが人生において、Win-Winの関係、与えることで与えられる関係を築いていきたいのなら、相手を選び、お互いに利益のある提案・交渉をするスキルを身につけるのはとてもよい選択だと思います。僕も未熟ながら実践を繰り返す日々ですが、ぜひあなたと一緒に学んでいけたらと思います。

PS
『7つの習慣』はオススメですが、Win-Winの交渉に特化した内容を学びたければコチラもどうぞ♪

 

 

 

この記事の執筆者

安永 周平 Shuhei Yasunaga

1982年生まれ。福岡県出身。九州大学工学部卒(修士)。『THE GO-GIVER』日本公式サイトの運営責任者。

 

トヨタ自動車で4年間、生産技術のエンジニアとして勤めた後、ダイレクト出版へ入社してセールス&マーケティングの仕事に従事。3ヶ月後、グループ会社である経営科学出版の事業を任される。年商2億ほどで赤字だった事業部を1年で黒字化。1枚のセールスレターで2万人超の新規顧客を獲得した実績もあり、マネージャーとして事業部の年商7億円突破に貢献。

 

5年目に独立し、福岡で寿コミュニケーションズ株式会社を設立。現在、建設業を含む2社の経営に携わり営業チームの強化に当たる。ボブ・バーグの日本における独占ライセンシーとなり、当サイト『THE GO-GIVER』を通じて、営業、士業、中小零細企業の社長に役立つ教育事業を展開中。福岡在住。

 

 

 

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ログカテゴリー一覧

 

筆者一覧

ボブ・バーグ

『THE GO-GIVER』著者
人材開発会社バーグ・コミュニケーションズ代表
経営コンサルタント

 

安永 周平

『THE GO-GIVER』公式サイト運営責任者
寿コミュニケーションズ㈱ 代表取締役

 

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