ネコに学ぶ逃げ道の効果

FROM ボブ・バーグ

「お宅の近所に野良猫がいるわよ。しばらく食べてないみたいね…」

近所の女性がそう教えてくれた。外に出て周囲を見ると、50メートルほど離れた茂みの中に1匹の可愛らしい子猫がいた。やせ細っていて、いらだっているように見えた。紙のお皿に水を入れてやっても、私がそばにいると飲もうとしなかった。しかし、その場を立ち去ると、近寄ってきて水を飲んだ。

次にキャットフードを与えることにしたが、やはり私がそばにいると食べようとしなかった。しかし、その場を立ち去ると、近寄ってきて食べた。

「なるほど、そういうことか…」

私はそう確信した。直接食べさせることができる日が来ることを願いつつ、お皿を少しずつ自宅に近い場所に置いた。私がその場を立ち去ると、猫は逃げ道を確保できたと確信し、近寄ってきて食べた。

1週間もしないうちに、私がガラス戸の中に入っている限り、猫はテラスにまで来て食べるようになった。しかし、猫は警戒心を解かず、食べる時も絶えずこちらをうかがって、逃げ道が塞がっていないことを確認していた。

1週間後、猫はついに我が家の中に入って来て、ガラス戸のそばに身を寄せた。ただ、猫はガラス戸が開いていて逃げ道があることを確認していた。そこで、私はガラス戸を閉めて、猫がずっと家の中に居続けるかどうか実験しようと思った。猫を驚かせないようにゆっくりとガラス戸を閉めた。

私はこの可愛らしい猫と恋に落ちていることを自覚し、その猫の彼氏になりたいと心に決めた。私は猫の飼い方を知らなかった。動物好きではあるが、とりわけ犬が大好きだったのだ。実際、子どもの頃から、我が家ではいつも犬を飼っていた。だから猫については全くわからなかった。

ガラス戸をゆっくり閉めると…

猫は食べるのをやめて安全を確保するために猛スピードで外に出ようとした。しかし、その前に私は戸を全開にして猫が安心して食べられるように配慮した。何度かそうやっているうちに、私が戸を閉めても猫は安心するようになった。2年ほどたった今、猫は私の愛する友達である。私は猫に餌をやり、耳の後ろをかいてやった。もちろん、猫がそういう気分の時だけだけれど。

さて、この話のポイントは、猫はいつでも安心していられるように逃げ道を確保しておきたかったということである。実際に逃げるかどうかは別として「逃げ道がある」ことが猫にとっては大変重要だったのだ。

実は、これは人間も同じである。

見込み客はその典型だが、私たちが普段の生活の中で「動かそう」としている相手は、この猫と同じように感じている。その人達は、必ずしも「NO」と言いたいわけではない。NOと言える余地があることを知りたいだけである。

「無理にとは申しません」
「今、よろしければ、ちょっとお話させていただきたいのですが」
「ご都合が悪ければ、かまいませんよ」

これらのセリフは逆効果のように聞こえるかもしれないが、実際には大きな効果を発揮する。なぜか?相手と対立しそうな局面になると、人々は無理やり何かをさせられるのではないかというプレッシャーを感じる。そのために自分の身を守ろうとして敵対的な態度を取りやすい。つまり、相手が勝てば自分は負けると思ってしまうのだ。

相手の敵対心を取り除く方法

嬉しいことに、これに対処するための簡単な方法がある。誰かに何かをしてほしいのだが、無理やりさせられていると感じてほしくないなら、それをしなくても構わないということをハッキリと言葉で伝えるのが最善の方法なのだ

言い換えると、これは、相手のために逃げ道を作っておくということだ。そうすれば、相手はあなたに対して安心することができる。自分に選択権があることを知ると、相手はプレッシャーを感じずに済むからだ。

大抵の場合、押し付けられたものに反発したくなるのが人間の本性だが、与えられた選択権が大きければ大きいほど、その選択権を行使する必要性をあまり感じなくなる。つまり、相手のために作っておく逃げ道が大きければ大きいほど、相手はそれを使う必要性をあまり感じなくなるということだ。

相手に逃げ道を用意する目的

あなたは相手のために逃げ道を作っておくことでプレッシャーを取り除き、相手の立場を尊重したのである。これは相手を追い詰めるよりもはるかに素晴らしいやり方だ。あなたは相手があなたの提案に応じるかどうかよりも、相手を人間として大切に思っていることを伝えたのだから。

しかし、それでもあなたは、相手に逃げ道を与えると「NO」と言われるだけだと思っているかもしれない。だとしたら、よく理解してほしい。相手のために逃げ道を作っておくのは、相手がそれを使うためではない。あなたの目的は、相手に安心感を与えて逃げ道を使う必要性を感じなくさせることなのだ。

もちろん、相手は逃げ道を使うことが自分の最大の利益になると感じれば、そうするだろう。しかし、たとえあなたが逃げ道を作っておかなくても、結局、相手は同じことをするはずだ。いずれにしろ重要なのは…

「相手に」決定を下してもらうこと

である。あなたの要求を受け入れてもらう可能性を高める最善の方法は、無理にそれをしなくてもいいという選択肢を相手のために準備することなのだ。

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この記事の執筆者

アメリカでは伝説的な元トップ営業マンであり、対人関係・影響力の行使に関する第一人者。「21世紀のデール・カーネギー」の異名を持つ。

現在は経営コンサルタント・講演家としても人気を博し、元大統領や著名な政治家からも助言を求められる。2014年には米国経営協会(AMA)からビジネス界のリーダー上位30人の1人に選出されている。

主なクライアントはゼネラル・エレクトリック(GE)、リッツ・カールトン、レクサス、アフラック、MDRT、全米不動産協会等。フォーチュン500社に名を連ねる大企業からも絶大な支持を受ける。

著書はこれまで世界21カ国語に翻訳され、累計発行部数は100万部を超えている。累計20万部の『Endless Refferals』や世界的ベストセラーとなった『THE GO GIVER』などは全米の企業で多く研修マニュアルとして使われている。フロリダ在住。