交渉相手を間違っていないか?

FROM ボブ・バーグ

以前、月刊誌『SELLING』で、石油会社の社長であるジョー・クジノーの逸話を読んだことがある。彼がまだ地方のセールスマネージャーだった頃から、彼は自分が望むものを「誰が与えてくれるのか?」を知ることにおいて、卓越したスキルを発揮していた。

担当者から受けた不当な扱い

ジョーは、彼の地域で最も大口の取引先にプレゼン・交渉するため、担当者とアポを取っていた。ところが、その担当者は既に競合他社と契約を結んでしまっていたのだ。ジョーはその担当との打合せに時間どおりに到着したのだが、その時に受けた不当な扱いに強い怒りを覚えたと言う。

というのも、その交渉相手は、プレゼンをするためにジョーを中に招き入れてはくれなかった。代わりに、ロビーに立って腕時計見ながら「今から5分やるから、たった今我が社が契約した商品から、おたくの商品に乗り換えなくてはいけない理由を明確に説明してくれ」と言い放った。

何もできなかった悔しさ…

ジョーには、たった5分で内容を説明するのは無理だと分かっていた。さらに腹が立つのは、その交渉相手はジョーと全く目を合わせようともしなかった。ジョーの説明に全く興味がないのは明らかで、30秒ごとに時計をチェックする有様だった。そうして5分が経った時点で、交渉相手は突然ジョーの説明を遮り、「時間切れだ」と告げてジョーの手を握り、踵を返して去っていったのだ。

ジョーは呆気にとられていた。そして、この仕打ちの一部始終を受付の女性が見ていた。彼女は、自分の上司にあたる人間が、こんな横暴な態度を取ったことを恥ずかしく思ったが、彼女もまたどうすることもできなかった。ジョーもまた、黙ってその場を立ち去るしかなかった。

もしもジョーが呆気にとられず、冷静でいられたなら、おそらくプレゼンをしなかっただろう。きっと相手に対して、もっとゆっくりと話せる時間がないかと訊ねていたはずだ。しかし、ジョーはここで終わらなかった。ここからジョーは、「誰が与えてくれるのか?」を考えて行動を始めた。それによって「口撃なき達成」を成し遂げるのだ。

どうやって交渉を成功させたのか?

ジョーは、自分のオフィスに戻って状況を振り返り「自分がそんな扱いを受ける言われはない」と思った。そして、その交渉相手の失礼かつプロ意識に欠ける態度のために、取引先がジョーが扱う商品のメリットに気付かない…なんてことがあってはならないと思ったのだ(※ここでジョーが相手の役に立つことを考えていることに注目したい)。

ジョーは思った。自分が話すべき相手は「誰」か?それは、その会社の社長に他ならなかった。そして、彼は直接電話を掛けたのだ。彼はその社長に、自分の商品は競合の商品に比べて圧倒的に優れていることが実証されており、価格面でも劣っていないことを説明した。同時に「その週の頭には、御社の担当とその点について説明する時間を取っていた」とも話した。

相手のせいにしない態度を示す

そして、ジョーは落ち着いて「その時に何が起こったのか」「担当者がどういう態度をとったのか」「それによって自分が困惑した」という経緯を説明した。この「困惑した」という言葉はポイントだ。原因を「彼自身」に置いている点が、相手に好印象を与えている。そして、ジョーはこう続けた。

「こうした状況について伝えるために、本来のプロセスを無視してでも、社長に電話をさせて頂いたのです」

続けてジョーは、十分に考え、言葉を選んでからこう尋ねた。

「私は御社にお邪魔したのは初めてでしたが…ロビー立ったまま、たった5分でプレゼンをしてもらうのは、御社のポリシーなのでしょうか?もしそうでないのなら、担当の方は急用が入って、たまたま私が普段とは違う対応をされたのでしょうか?それとも、私の出鼻をくじくおつもりだったのでしょうか?」

すると社長は、ジョーに対して「もう一度状況を正確に説明してくれ」と言ったのだ。そして、「それを見ていた人間は居たか?」とも尋ねてきた。ジョーが、受付係がいたことを伝えたところ、社長はジョーの話が本当だと確信して謝罪をし、元々の担当者がいないところで個人的にアポを取ることを約束してくれたのだ。

あなたの望みを叶えてくれるのは誰か?

こうして、ジョーは契約をまとめることができた。それは今日に至るまで、その部署で歴代3番目に大きな利益となったそうだ。また、ジョー自身が言うように、その売上が彼のキャリアを一変させるきっかけにもなった。ちなみに、元々の交渉相手は平社員に格下げとなり、自分がこれまでやっていた「思いやりのない扱い」が何をもたらすのか、身を以て学ぶことになったそうだ。

ジョー・クジノーの物語は、「誰が与えてくれるか?」を正しく知ることにおいての素晴らしい例だと言えるだろう。今現在の交渉相手ではどうにもならない場合は、正しい交渉相手を見つけることも必要になる。プロフェッショナルな振る舞いによって、その相手を自分の味方につけて「口撃なき達成」を行うのだ。

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この記事の執筆者

アメリカでは伝説的な元トップ営業マンであり、対人関係・影響力の行使に関する第一人者。「21世紀のデール・カーネギー」の異名を持つ。

現在は経営コンサルタント・講演家としても人気を博し、元大統領や著名な政治家からも助言を求められる。2014年には米国経営協会(AMA)からビジネス界のリーダー上位30人の1人に選出されている。

主なクライアントはゼネラル・エレクトリック(GE)、リッツ・カールトン、レクサス、アフラック、MDRT、全米不動産協会等。フォーチュン500社に名を連ねる大企業からも絶大な支持を受ける。

著書はこれまで世界21カ国語に翻訳され、累計発行部数は100万部を超えている。累計20万部の『Endless Refferals』や世界的ベストセラーとなった『THE GO GIVER』などは全米の企業で多く研修マニュアルとして使われている。フロリダ在住。