相手を「知った気」になる行動

FROM 安永周平

こんな実験がある。心理学者のジェームズ・ペネベーカーは、互いに面識のない人達を小さなグループに分けて、自分が興味がある話題について15分間話してもらった。たとえば生まれ故郷について、通っていた大学について、今の仕事について、今日の天気について…などなど。そして15分後、「自分がどのくらいグループのことを好きになったか?」を自己評価してもらう、というもの。

このメルマガを読んでいるあなたなら、自分の話をした人がどんな気分になったのかお分かりだろう。お察しの通り、自分の話をした人は、話せば話すほど、グループのことが好きになったのである。これについては、別に驚くようなことではない。なぜなら、人はそもそも自分の話をするのが大好きだからだ。事実、ペネベーカーは、著書の中で「大抵の人は、自分の考えを伝えることがこの上なく楽しい学習経験であるとわかる」と言っている。

相手を「知った気」になる危険性…

ところで、自分の話をした人は、グループの人々についてどのくらいわかっただろうか?普通に考えれば、グループの人たちのことを知るには、彼ら(彼女ら)の話を聴くのが1番だろう。だから、その15分間において、自分のことを話さずに話を聴いていた人ほど、グループの人たちについて、より多くを知ることができるはずだ。逆に自分の話をしてばかりいた人は、当然グループの人たちのことは何も分かっていないだろう。

ところが、ここでちょっと奇妙なことが起こった。ペネベーカーによれば、実験では、自分の話を多くした人ほど、グループの人々のことを「知った気」になっていたというのだ。自分の話ばかりして、会話を牛耳っていると、他の人が一言も話していなくても、周囲の人のことが分かったような気になるのだという。

売れない営業がやっていること

勘のいいあなたはお気付きだと思うが、実はコレ、売れない営業がやっている行動と同じだ。売れない営業は、相手の話(悩み)を聴くことなく、自分の商品の良さをアピールする。「きっと気に入っていただけると思います」「よくお似合いで、格好いいですよ」「他のお客様からも評判がいいのです」「お値段に見合う価値は十分にありますよ」といって、猛烈な売り込みをする。

こうした人は、セールストークとは「いかにして自分が商品を上手くプレゼンできるか」だと思っている。そして困ったことに、自分(の商品)の話をすることで、相手…つまり見込み客のことを「知った気」になってしまう。そのためだろうか、「相手と信頼関係が築けた」という大いなる勘違いをして、ここぞとばかりに売り込みをかけてクロージングしようとするが、残念ながら売れることはない。

その商品がどんなに素晴らしいものであったとしても、相手にとって「要らんモンは要らん」のだ。だから、相手の話を聴かない人が、効果的なセールスなどできるはずもない。ボブが言うように、セールスとは相手に対してするものではなく「相手と一緒に買うこと」だからだ。また、仮に相手がその商品を欲しかったとしても、その営業からは買わないだろう。何度でも繰り返すが、「他の条件が全て同じなら、人は知っていて、気に入っていて、信頼している人に仕事や紹介を回す」からだ。

営業=押し付けがましい嫌なヤツ?

我々にとっては残念なことではあるが、『モチベーション3.0』の著者ダニエル・ピンクによれば、営業マンと聞いて、人がまず思い浮かべるのは「押し付けがましい嫌なヤツ」だと言う。営業マンの典型的なイメージは、人を思い通りに操るズル賢い人間で、成功した営業マンは、態度が威圧的で、自分の利益しか考えず、人を騙すことさえいとわない人間のように思われている。

ある調査で、MBA保有者が一般的に選ぶ44の職業について「社会的に果たしている責任」という観点でランク付けが行われた。その結果、営業マンはなんと43位で、かろうじて最下位を免れた(ちなみに、最も社会的責任を果たしていない職業とされたのは株式ブローカーだった)。一般的に見ると、営業という仕事はやはり世間からは嫌われている。しかし…

「相手の話を聴く」だけで状況は変わる…

こうした悪いイメージは、やはり先のように、多くの営業が相手の話を聴くことなく、自分(の商品)の話ばかりをしていることが原因だろう。また、それによって相手のことを「知った気」になってしまうから、問題に気付かない。結果、改善もされない。売れないのは商品知識の不足や、プレゼンの仕方の問題だと思って、さらに熱心に売り込みをかけることになる。そして嫌われる。それでは、結果は目に見えている…

もちろん、あなたはそんな営業をしてはいないだろう。ただ、「お客様と信頼関係を築けているか?」という質問は、時々自分に問いかけてみる必要があるのではないだろうか。もしかすると、自分が一方的に喋ることで、相手のことを分かった気になっているだけ…ということがあるかもしれない。相手の悩みは、自分が話すことでは知り得ない。相手の話を聴くことによってのみ理解できるもの。そして、それは営業にとって必要不可欠な仕事であるはずだ。

PS
コレを書いている僕が今、正に『読者であるあなたのことを本当に理解しているだろうか…』と猛省している…(-.-;)

PPS
自分の話をするのではなく、相手の話を聴くこと…これは、セールスにおける3つのポイントのうちの1つだ。残りの2つについては、明日まで公開中のこちらのビデオで確認してみてほしい。

紹介で売れ続けるために必要な3つのこと

URLをコピーする
URLをコピーしました!

この記事の執筆者

寿コミュニケーションズ株式会社代表取締役/寿防災工業株式会社取締役。読者1万人超の当メルマガ『THE GO-GIVER』発行人であり、福岡で40年続く社員52名の防災設備会社 二代目。1982年生まれ。福岡県出身。筑紫丘高校→九州大学工学部卒(修士)

新卒でトヨタ自動車に入りマークXやクラウンのモデルチェンジ、バンパー塗装工場の新設を担当。4年目で退職し半年のニートを経て教育ベンチャーのダイレクト出版へ転職。1通のセールスコピーで累計2万人超の新規顧客を獲得したマーケティング経験は宝。マネージャーとなりメンバーから総スカン喰らった経験も宝。事業部が年商7億となった5年目、独立して寿コミュニケーションズを創業。

WEBメディア事業のお客様からの依頼でDMサポート事業を始めたら、紹介だけで受け切れないほど仕事依頼があり、現在は新規クライアント受付停止中。BtoB無形商材に特化したDM戦略&戦術が強い。本業は「人の命と建物を火災から守り地域の街づくりに貢献する」防災設備会社で事業承継を前提に組織改善と採用に奮闘中。