墜落事故に学ぶチームの心得

FROM 安永周平

今から遡ること35年、フロリダ航空90便が、離陸直後にワシントンDC近郊の氷結したポトマック川にかかる橋に墜落・激突するという痛ましい事故が起きました。この事故により、機長、副操縦士を含む乗客74名、そして橋梁上の自動車の中にいた4名、計78名の命が失われたのです。

墜落後、客室乗務員1名と乗客4名は救助されました。水没を免れ、尾翼部分にしがみついた人たちの救助を見守る映像は、当時、日本でも報道されていたので、あなたも見たことがあるかもしれませんね。そして、この墜落事故が起きる前、ボイスレコーダーにはこんなやり取りが残されていました。

ボイスレコーダーに残った墜落前のやりとり

副操縦士「待機時間が結構長引きましたから、もう1度、翼の凍結具合を調べてみましょう。」

機長「いや、もうすぐ離陸だ。」

(離陸体制に入って、ある計器を見る副操縦士…)

副操縦士「機長、これはおかしいですよね?ああ、まずい。」

機長「いや、大丈夫だ……。」

副操縦士「ええ、たぶん大丈夫でしょう。」

(無理やり高度を上げようとして、機体が音を発する)

副操縦士「ラリー機長、墜落してしまう!」

機長「分かってる!」

…この後、78名の命が奪われる最悪の航空事故は起こりました。

リーダーへの盲従が招いた悲劇

名著『影響力の武器』の著者であるロバート・チャルディーニ博士は、この事件について「チームのメンバーが、経験豊富で権威もあるリーダーに無条件に従ったことで起きた悲劇の一例に過ぎない」と言っています。同時に、リーダーとして影響力を持った人間が、周囲に与える影響力の大きさを見誤る危険性についても言及しています。

人間のこうした行動パターンは「機長症候群」と呼ばれています。事実、機長の明らかな過ちを、誰も正さなかったために起こってしまった事故は多数存在するのです。そして、機長症候群は、何も航空業界に限ったことではありません。

責任を放棄するプロフェッショナル達

ある実験によれば、資格も経験もあるはずの看護師が患者とのやり取りの中で、いったんドクターが絡んできたら、患者に対するプロとしての責任を放棄してしまうことが明らかになっています。

この実験の中で、心理学の研究者であるチャールズ・ホフリングは、様々な病棟の全22箇所のナース・ステーションに電話をして「自分がその病院の医師だ」と告げたうえで、特定の患者にアストロゲン薬剤を20mg投与するように看護師に指示を出しました。

ところが、実はこの薬剤は病院での仕様が許可されていなかったうえに、20mgという処方は、通常の2倍の量に相当するものでした。にもかかわらず、なんと95%のケースで看護師は、ただちに薬品棚からこの薬を取り出して病室に向かおうとしたのです。

看護師が医者に意見しないと…

スタッフが揃っている医療チームでは、それぞれがプロとして最善の判断をするべく協力していると思われがちです。しかし、よく調べてみると、プロとしての自分の役割を果たしているのはリーダー1人だけ…ということも少なくありません。先の実験では、看護師は自分のプロとしての知識を使うことなく、リーダーである医者任せです。

ただ、それも仕方のないことかもしれません。なぜなら、このケースでは「権威」も「権限」も担当の医師にあるのですから。リーダーは責任者であり、スタッフを罰する権限もある。そして、医者は高等教育も受けている。だとすると、周囲は自ずとリーダーである医師に判断を譲ることになるのも当然です。しかし、こうした状況が最悪の結果を招くことにつながるのは、先に述べた通りです。

リーダーの判断が正しいとは限らない

賢明なあなたはお察しだと思いますが、これはセールスに関わる私たちビジネスパーソンにも当てはまります。あなたが営業部長や営業課長といったリーダーの立場ならもちろん、チームのメンバーの1人であっても、こうした状況の危険性は覚えておかなければいけません。

もし、リーダーがメンバーの意見を聴かなくなり、メンバーがリーダーに異論を唱えることもなくなれば「知らないうちにお客様から信頼を失っている」なんていう事態も起こりかねません。これは、どんな会社でも同じことでしょう。リーダーがメンバーの話を真摯に聴く…そうした協力的なリーダーシップは、この悪循環を断ち切る鍵となります。

上司の意見を疑う勇気を持とう

もちろん、成果を上げることに関しても同じです。確かに上司は、メンバーよりも経験が豊富で、色んな知識を持っているかもしれません。そうした上司の意見が役に立つことも多くあるでしょう。しかし、上司のアドバイスだって絶対ではありません。

特に、そのアドバイスが20〜30年も前の経験によるものであれば、今現在は状況が変わっている可能性だってあります。高度経済成長期、売上が右肩上がりだった時代の話が、現在も同じように通用するとは限りません。実際、現在の消費者は昔よりもずっと賢くなっています。小手先のセールストークで物が売れる時代ではありません。

自分で調べることの重要性

だとしたら、自分の知識を増やしたり、泥臭いリサーチなどをしたりしながら「本当に成果が上がる方法は何か?」を考えなければいけません。上司に異論を唱えるのはプレッシャーもあると思いますが、自分の判断で仕事をするのは、ある意味でとても幸せなことです。指示されたことだけをやるのに比べ、充実感は格段に上がるでしょう。実際に成果が上がればなおさらです。

ですから、もしあなたが現在、仕事のやり方に行き詰まっているのであれば…1度これまでのやり方を疑ってみる時期なのかもしれませんね。実際、自分で調べて、別の方法を模索し、それを行動に移すというのは、とてもエキサイティングで楽しいことですから。

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今月から木曜日にも記事をお届けさせていただきます。
あなたの役に立てる内容を届けられるよう頑張りますので、よろしくお願いいたします。

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この記事の執筆者

寿コミュニケーションズ株式会社代表取締役/寿防災工業株式会社取締役。読者1万人超の当メルマガ『THE GO-GIVER』発行人であり、福岡で40年続く社員52名の防災設備会社 二代目。1982年生まれ。福岡県出身。筑紫丘高校→九州大学工学部卒(修士)

新卒でトヨタ自動車に入りマークXやクラウンのモデルチェンジ、バンパー塗装工場の新設を担当。4年目で退職し半年のニートを経て教育ベンチャーのダイレクト出版へ転職。1通のセールスコピーで累計2万人超の新規顧客を獲得したマーケティング経験は宝。マネージャーとなりメンバーから総スカン喰らった経験も宝。事業部が年商7億となった5年目、独立して寿コミュニケーションズを創業。

WEBメディア事業のお客様からの依頼でDMサポート事業を始めたら、紹介だけで受け切れないほど仕事依頼があり、現在は新規クライアント受付停止中。BtoB無形商材に特化したDM戦略&戦術が強い。本業は「人の命と建物を火災から守り地域の街づくりに貢献する」防災設備会社で事業承継を前提に組織改善と採用に奮闘中。