トヨタで学んだ問題解決のコツ

FROM 安永周平

よく色んな人から「もったいない」と言われるのですが、僕は新卒でトヨタ自動車にエンジニアとして入社して、3年半勤めて退職しました。「せっかく天下のトヨタ自動車に入ったのに…」「給料もいいし、そのまま勤めていれば一生安泰だったのに…」ってな具合です。

実際、僕が辞めた後、リーマンショック・円高で落ち込んでいたトヨタの業績はみるみる回復し、過去最高益を上げ続け、純利益2兆円を上げました。振り返ってみると僕がいた3年半は、正に業績が谷の時期で、完全に景気がいい時のボーナスを貰い損ねた感じです(笑)。まぁ、そのお陰でセールス・マーケティングの世界に入ったわけですが…

トヨタ全社員・共通のフレームワーク

そんな僕の失敗談はさておき、トヨタでは新入社員研修の中で「トヨタの問題解決」というフレームワークについて、かなり多くの時間を取って教え込まれます。これはトヨタの全社員が使う、問題を発見し、解決に導くための8つのSTEPです。具体的には…

STEP1:問題を明確にする
STEP2:問題をブレイクダウンする
STEP3:達成目標を決める
STEP4:真因を考え抜く
STEP5:対策を立てる
STEP6:対策をやりぬく
STEP7:結果とプロセスを評価する
STEP8:成果を定着させる

…といったものです。STEP1〜8の中でPDCAサイクルが回るようにもなっています。当時、未熟だった僕にはこの凄さが分かりませんでしたが、今考えてみると本当に優れたフレームワークだと思います。まずこれらを研修の中で徹底して教え込まれ、配属後も重要な成果報告などの場では必ずこの8つのSTEPに沿って報告をしなければいけません。

というのも、思考のプロセスが統一化されていないと議論が噛み合わないことが増えます。チームのメンバーが増えれば増えるほど、この問題は悪化します。そうならないように、最初の段階で全ての新入社員が同じフレームワークで考えるように、徹底して教育されるというわけですね。8万人を超える従業員をかかえる大企業では、こうした思考プロセスの統一化は有効なのだろうと思います。

ところで、このうちSTEP4の「真因を考え抜く」は、有名なのであなたもご存知かもしれません。知らないという方も、次のフレーズなら聞いたことがあるのではないでしょうか?

「なぜなぜを5回繰り返せ!」

実際、この言葉は社外でも多くの人が知っています。そして、この言葉のポイントは、ある問題があった時、安易にその原因を決めつけてはいけないということ。というのも、私たちは普通、問題を発見した時、最初の「なぜ?」を考えることで、直接的な要因となりそうな事実を推定します。

しかし、これを1〜2回しかやらないと、思い付きの対策に飛びついてしまうことになります。これでは、問題は根本的には解決しません。たとえば、あなたのチームで「スタッフの商談力の低下」という問題が事実としてあるとしましょう。この時、「なぜ?」を繰り返す回数が不十分だと…

問題:スタッフの商談力が足りない
なぜ① → スタッフの活動量が足りない
なぜ② → スタッフの意識が低い

…となり、ここで終わると「スタッフの意識が低い」ということを原因として結論付けてしまうわけです。しかし、原因は本当にスタッフの意識でしょうか?もしそれが本当なら、「意識の高いスタッフだけを採用する」ということを対策として取り組むことになります。

しかし、超有名・優良企業でもなければ、これは現実的ではありません。結果、社長や営業部長が「もっとやる気を出せ!」と叱咤激励するだけで、何も変わらないのがオチです。そして、スタッフの成長の機会を奪ってしまう可能性だって高いです。何より、この「スタッフの意識が低い」という原因の決めつけは、問題解決においてやってはいけない間違いを犯しています。それは…

問題の原因を「人」にしてはいけない

問題の本当の原因(真因)を、安易に「人」の問題にしてはいけないということです。スタッフの「問題意識が低い」とか「やる気がない」といったことを原因にするのは、止むを得ない場合を除いては避けなければいけません。なぜなら、人を原因にしても問題は根本的には解決しないし、その人への「人格攻撃(口撃)」へと繋がりやすいからです。

「だからお前はダメなんだ!」「なぜお前はそんなにやる気がないんだ!」といった詰問(※質問ではなく「詰問」です)をすれば、スタッフは自尊心を傷付けられ、ますます態度を硬化させるでしょう。問題は解決しないどころか、悪化の一途をたどるだけです。

「誰が悪いか?」ではなく「何が悪いか?」を考える

それに、こうした人の原因は、なぜなぜを繰り返すプロセスではよく出てきますが、さらになぜなぜを続けられる場合がほとんどです。言ってみれば、思考の深掘りが甘いのです。実際、「誰が悪いか?」という問題は、多くの場合「何が悪いか?」という問題まで深掘りできるもの。たとえば、先の例で言うと…

問題:スタッフの商談力が足りない
なぜ① → スタッフの活動量が足りない
なぜ② → スタッフの意識が低い
なぜ③ → 活動しても成果を上げる自信がない
なぜ④ → 成果を上げる方法がわからない
なぜ⑤ → 具体的なやり方を教えていない(真因!)

というように、なぜなぜを5回繰り返すことで初めて、真因である可能性が高い原因にたどり着きます。これなら、対策打てますよね?精神論・根性論ではなく「週2回、1時間スタッフへの教育・相談時間を設ける」といった、現実的にも実践可能な対策が浮かんできます。そして、これがわからなければ、根本的な問題解決にはつながりません。

先日の記事で、「誰が正しいか」<「何が正しいか」といった話をしましたが、問題を発見する際にも同じことが言えます。「誰が悪いか」<「何が悪いか」を考えることが大切です。たとえば、業務のプロセスや仕組み…といったこと。一方で、「誰が悪いか?」といった犯人探しは、その人を追い詰める効果はあっても、問題を解決する手段として有効だとは言えません。

人を口撃しても問題は解決しない

原因を人に求めても、問題は解決しません。あなただって、商談や交渉が上手くいかない原因を相手に求めたりはしないでしょう。新たな知識を学ぶこと、商談のトレーニングをすること…自分がコントロールできる物事・行動の中に原因はきっとあるはずです。

それに、対人関係のエキスパート、レス・ギブリン氏曰く「人は大抵の場合、自分の自尊心を満たすために行動する」のです。相手に責任を求め、自尊心を傷付けるのではなく「本当の原因(真因)は何か?」ということを深く考えることも、私たちにとって大切なことではないでしょうか。

PS
ちなみに、もし説得・交渉をはじめとした対人関係を円滑にする「具体的なやり方」を知らないなら…コチラオススメです。

ボブバーグに学ぶ「対人関係の技術」とは?

PPS
もう1つ言うと、なぜなぜは「5回」というのがポイントです。なぜなら、仕事でそれ以上繰り返してしまうと…個人的に都合が悪いことに、最後は必ず「社長のせい」になってしまうからです(苦笑)

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この記事の執筆者

寿コミュニケーションズ株式会社代表取締役/寿防災工業株式会社取締役。読者1万人超の当メルマガ『THE GO-GIVER』発行人であり、福岡で40年続く社員52名の防災設備会社 二代目。1982年生まれ。福岡県出身。筑紫丘高校→九州大学工学部卒(修士)

新卒でトヨタ自動車に入りマークXやクラウンのモデルチェンジ、バンパー塗装工場の新設を担当。4年目で退職し半年のニートを経て教育ベンチャーのダイレクト出版へ転職。1通のセールスコピーで累計2万人超の新規顧客を獲得したマーケティング経験は宝。マネージャーとなりメンバーから総スカン喰らった経験も宝。事業部が年商7億となった5年目、独立して寿コミュニケーションズを創業。

WEBメディア事業のお客様からの依頼でDMサポート事業を始めたら、紹介だけで受け切れないほど仕事依頼があり、現在は新規クライアント受付停止中。BtoB無形商材に特化したDM戦略&戦術が強い。本業は「人の命と建物を火災から守り地域の街づくりに貢献する」防災設備会社で事業承継を前提に組織改善と採用に奮闘中。