リンカーンに学ぶ手紙術

FROM ボブ・バーグ

私が講演会やセミナーでよくお勧めしている本の1つに、「Lincoln on Leadership(リンカーンのリーダーシップ)」というドナルド・T・フィリップスの本がある。とても示唆に富む本であり、同時に実用的な本だ。この本には、リンカーン大統領がいかにして”人を動かす”ことに精通していたのかがとても理解できる。

「リンカーンの手紙」に学ぶ”人の動かす”ポイント

リンカーンは非常に機転の利く謙虚な男で、大統領への厳しい批判に対しても、誰の気分も害さない方法で要点を言うことができる人物だったと知られている。以下は彼の部下にあたるジョセフ・フッカー大将が新しい職務に付いた後、リンカーンがフッカーに宛てて書いた手紙になる。リンカーンは、出会ってすぐにこの手紙を大将に渡したと言われている。


フッカー大将 様

私は、ポトマックの陸軍の長にあなたを任命しました。私がこの決断をしたのには、私にとって充分と思える理由があってのことです。ただそれでも、あなたに対してまだ期待できるであろういくつかの事柄についてお知らせしておくのが、あなたにとっても最善のことであろうと思い、こうして言葉にしております。

間違いなく、あなたは勇敢で技能に長けた兵士であり、私もまた好ましいと感じる人物です。また、あなたは、自分の意見が正しいときでも、政治と職務を混同するような人物ではないと私は分かっています。

あなたは自分に自信が溢れている。それは、かけがえのない資質とは言わないまでも、とても素晴らしく、価値のあることです。また、あなたには大志がある。それは、やり過ぎとならなければ、害とはならずむしろ善なるものになるはずでしょう。

ただ、ゲン・バーンサイド司令官の軍隊に所属していたときには、あなたはその大志を前面に出し、司令官の目的の遂行を阻害してしまったことと思います。それは国に対する大きな過ちを犯したということであり、功績を収め名誉ある兵士たちに対しても間違った行為であったことでしょう。

また、陸軍と政府には独裁者が必要なのだとあなたが口にしたとも聞いています。しかしそれでも、私はあなたに権限を与えました。成功を収めた大将だけが独裁者となることができます。私があなたに期待しているのは、軍事面での成功であり、あなたの君主的態度に賭けているのです。政府は、最大限の努力を以て、司令官としてのあなたに相応しいサポートをしていく所存です。

私が恐れているのは、あなたのうちに潜む何かにより、司令官としての批判に晒されることとなり、あなたが自信を失ってしまうのではないかということです。そうならないよう、私は最大限のサポートを行います。そのような精神状態の時、軍というものから善なる行いをすることは、あなたにも、たとえナポレオンであってもできることではないのですから。

付け加えますと、無謀なことをしないようにお気をつけください。無謀ではなく、精力と弛まぬ警戒心を以て、邁進し、我々に栄光をもたらしてくれることを期待しています。

敬具

A・リンカーン

こちらの要求をうまく相手に飲んでもらうためにも…

実に素晴らしい手紙で、私は何度読み返しても読み飽きない。リンカーンは巧みにフッカーがしたことについて良く思ってない旨を伝える一方、冒頭部と手紙全体を通して彼の特徴について称賛している。

特にフッカーの独裁制に対する信念をたしなめる部分は私のお気に入りだ。「成功を収めた大将だけが独裁者となることができる」。これは、 言い換えればこういうことでもある。それは「言うだけなら簡単だ。馬鹿なことは胸の内に秘めておいて、人々に実際にきみの能力を示したまえ」ということだ。手紙の要点はこのことにつきるが、これではフッカーが自分のために働かないどころか、政府に敵意を向け、あらゆる提案にすら反対立場を取りかねない。

手紙でうまくいくことは、電話でも対面での会話でもうまくいく。批判する前に、相手の長所に注目してみて欲しい。批判する前と後にもそれを組み込めば驚く程相手からの印象は変わることだろう。フッカー大将への手紙でリンカーンが巧みに行ったように、自分は相手の味方であり、相手の能力にも信頼を置いている旨を伝える形で話を結ぶべきだ。

ユダヤ教の古い格言にもあるように強き者とは「自分の感情を制御し、敵を味方にできる者」であるという。 言い換えれば、理性と自制心を持って悪い状況へ対処し、好転的な状況へ導くことができる人物という意味だ。まさしく16代大統領はこの理性と自制心といった資質を備えた”強き者”だったと言えるだろう。このような人物こそ人の上にたてるものだ。

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この記事の執筆者

アメリカでは伝説的な元トップ営業マンであり、対人関係・影響力の行使に関する第一人者。「21世紀のデール・カーネギー」の異名を持つ。

現在は経営コンサルタント・講演家としても人気を博し、元大統領や著名な政治家からも助言を求められる。2014年には米国経営協会(AMA)からビジネス界のリーダー上位30人の1人に選出されている。

主なクライアントはゼネラル・エレクトリック(GE)、リッツ・カールトン、レクサス、アフラック、MDRT、全米不動産協会等。フォーチュン500社に名を連ねる大企業からも絶大な支持を受ける。

著書はこれまで世界21カ国語に翻訳され、累計発行部数は100万部を超えている。累計20万部の『Endless Refferals』や世界的ベストセラーとなった『THE GO GIVER』などは全米の企業で多く研修マニュアルとして使われている。フロリダ在住。