そんなの強みでも何でもない

FROM 安永周平

事業をやっていると、よく強みを伸ばせとか、USP(Unique Selling Proposition)を見つけろとか…そんな話をたくさん聞くと思います。実際、他社にはない強みがあれば、自社の競争優位が上がりますし、お客さんが増える可能性は大きく上がるでしょう。

独自の強みが価値をつくり出す

では、あなたの事業の強みはいったい何でしょうか?競争優位となる要素は何でしょうか? 経営戦略の第一人者、ハーバード大学経営大学院のマイケル・E・ポーター教授は、著書『競争優位の戦略』において、競争優位を次のように説明しています。

「基本的にいうと、競争優位というものは、会社が買い手のためにつくり出すことのできる価値から生まれてくる。しかも、その価値をつくり出すのに要したコスト以上の価値でなければならない。価値は、買い手が喜んでカネを支払ってくれるものであり、他社より優れた価値というのは、同等の便益を他社より安い価格で提供するか、あるいは他社より高い価格だったらそれを相殺して余りあるほどの得意な便益を提供するか、のどちらかである。」

では、もう1度聞きます。あなたの競争優位性は何でしょうか? …って、この説明で見つかるなら苦労しませんよね(笑)なので、ある住宅工務店の社長と経営コンサルタントの会話を紹介します。この話、長く事業をやっている人なんかは特に参考になるのではないでしょうか。

工務店社長とコンサルタントの会話

※以下、コ:コンサルタント、社:工務店社長

コ「どうしてお客さんは、あなたの会社で家を建てるんですか?」

社「高気密・高断熱だからです」

コ「本当に?」

社「えぇ、うちの住宅は高気密・高断熱なのに、坪単価が安いですから」

コ「似たような家が多数あるなかで、なぜお客さんは、あなたの会社で家を建てなければならないのでしょうか?」

社「う〜ん、どうしてだろう。結局、家というのは建ててみないとわからないからなぁ」

コ「それでは、言い換えましょう。どうして”既存のお客さん”は、あなたの会社から家を買ったのでしょうか?」

社「だから、高気密・高断熱で安いからです」

コ「本当ですか?」

社「えぇ、たぶん」

コ「それでは、最近あなたの会社から家を買った人は誰でしょう?」

社「中島さんです」

コ「中島さんは、どんな人ですか?」

社「市役所にお勤めで、人の紹介でうちで建てました」

コ「その人は家を建てる時に、どんなリクエストをしましたか?」

社「えーと、外見はこんな風で、間取りはこんな風で」

コ「高気密・高断熱は指定しましたか?」

社「えぇ」

コ「いつ、しましたか?」

社「う〜ん、私がそちらの方がいいと説明した時ですね」

コ「ということは、中島さんのほうから言い出したわけじゃないんですね」

社「あっ、そうでしたね」

コ「それじゃ、どうしてその人は、あなたの会社で建てたのでしょう?」

社「なんとなくじゃないかなぁ」

コ「あえて、理由を言うと?」

社「うちは親父の代から大工だから、信用があったんじゃないかなぁ」

コ「信用って?」

社「この辺じゃ、けっこう二世帯住宅を建てているから」

コ「どのくらい建てました?」

社「300棟くらいかな」

コ「それはすごい数ですね。二世帯住宅だったら、地元で何番目くらいの会社ですか?」

社「たぶん1番か2番。もう1つ大きいところがあるんですが、どっちが大きいかはわかりません」

コ「ということは、1番大きい可能性もある?」

社「そうですね」

この工務店の競争優位性は何か?

さて、この工務店の競争優位性は何でしょうか? 賢明なあなたなら、きっと既に答えが分かっていると思います。答えは、二世帯住宅で、地元でナンバーワン。二世帯住宅のニーズを細やかに把握して、家族の絆そして健康を考えて、最高に住みやすい家を提案できることです。

実はこれ、経営コンサルタントの神田昌典さんが、クライアントの工務店の社長とした会話の内容です。マーケターとして名高い神田さん曰く、この工務店にとって「高気密・高断熱」は、競争優位性でも何でもありません。そう、競争優位性は自社の視点ではなく、”顧客の視点”で考えなければならないのです。

では、最後にもう1度聞きます…

あなたの事業の競争優位性は何でしょうか?強みは何でしょうか? それは本当に「顧客の視点」に基づいたものでしょうか? 創業間もない会社はともかく、堅実な事業を長く続けてきた人や、顧客に価値を与えようと努力を続けてきた人は、きっと顧客視点の強みを持っていると思います。既存の顧客から選ばれている理由が何かしらあるはずです。

コンサルタントにもレベルがありますから、先のように顧客視点での強みを引き出してくれる人もいるでしょう。そのような本物のコンサルタントがあなたの身近に入れば、ラッキーです。何も問題はありません。一方で、クライアントの話を大して聞かず、自分の経験からしか物を言わないコンサルタントも中にはいるものですから、ぜひ本物を見極める眼を持ちたいものですね。

PS
ここ数年、「治療院向け」のコンサルタントも増えています。そうした人たちのアドバイスが本当に的を得ている(顧客視点に基づいている)かどうか見極める際には、ぜひコチラを参考にしてみてください。

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この記事の執筆者

寿コミュニケーションズ株式会社代表取締役/寿防災工業株式会社取締役。読者1万人超の当メルマガ『THE GO-GIVER』発行人であり、福岡で40年続く社員52名の防災設備会社 二代目。1982年生まれ。福岡県出身。筑紫丘高校→九州大学工学部卒(修士)

新卒でトヨタ自動車に入りマークXやクラウンのモデルチェンジ、バンパー塗装工場の新設を担当。4年目で退職し半年のニートを経て教育ベンチャーのダイレクト出版へ転職。1通のセールスコピーで累計2万人超の新規顧客を獲得したマーケティング経験は宝。マネージャーとなりメンバーから総スカン喰らった経験も宝。事業部が年商7億となった5年目、独立して寿コミュニケーションズを創業。

WEBメディア事業のお客様からの依頼でDMサポート事業を始めたら、紹介だけで受け切れないほど仕事依頼があり、現在は新規クライアント受付停止中。BtoB無形商材に特化したDM戦略&戦術が強い。本業は「人の命と建物を火災から守り地域の街づくりに貢献する」防災設備会社で事業承継を前提に組織改善と採用に奮闘中。