口コミ&紹介が止まらない社長 / 株式会社カムラック 賀村研様:前半

From 安永周平

先日、知り合いの紹介で偶然の再会を果たした社長さんがいます(注:実は飲み会の席に押しかけただけなのですが…苦笑) 不思議なことに、彼は拠点である福岡だけでなく、出張先の東京でも「紹介したい人がいるんだけど、いつなら空いてる?」という声がひっきりなしに掛かるのです。そして、新たに知り合った人は喜んで彼の会社を紹介・宣伝する…と。なんだかとても羨ましい話ですが、そこにはいったいどんな秘密が隠されているのでしょうか?

社員の多くが障がい者のIT企業?

福岡を拠点とするIT企業、株式会社カムラックを経営する賀村研さん。まずこの会社がユニークなのは、社員のほとんどが障害を持つ方だということです。正確には「指定障がい福祉サービス事業者 就労継続支援A型事業所」というのですが、障がいを持った方がIT企業でシステム開発をしているというのは、全国的にも珍しいのではないでしょうか。

ただ、これだけ聞くと、障害者の雇用を生み出している”慈善事業”のようなイメージを持たれるかもしれません。実際、僕も今回のインタビューをするまではそんな印象を持っていました。なんせ賀村さん、見た目も”いい人オーラ”が漂っているので(笑) もともと福祉関係の仕事が好きだったんだろう…と。

ところが、話を聴いていくうちに、そうではないことが分かりました。いや、いい人であることに変わりはないんですが、彼の目的・使命はもっと先にあったのです。というのも、彼はもともと福祉関係の仕事に興味があったわけではなく「IT業界の発展」を目指していて、そのために必要な人材不足の問題を解決したかったのだと。

社会の課題「人材不足」を解決する

元々IT業界にいた賀村さんですが、業界では常に「人手不足」が叫ばれていました。言ってみれば、これは”社会の課題”です。カムラックを創業する前から、これを解決する方法を模索していたそうです。それで、ある時に気付いたのが、元プログラマーだったお母さん達の存在です。

仕事が忙しくなってきた時、結婚して仕事を辞めてしまった知り合いのお母さんたちに話を聞いたら、多くの方が今でも「働きたい」と言うそうなんですね。それで、彼が「働きたいのに、なんで働かんと?」と聞くと、理由は勤務時間でした。ほとんどのIT企業はフルタイム勤務が条件で、子供を育てながらでは働けないのだと。

そこで、試しに「うちで10-15時までの勤務でOK、とかだったら来る?」と聞くと、みんな来ると言うそうなんですね。「持ち帰りならできる」とも。そう、彼女たちに活躍してもらえれば業界に”デキる人”が増えるんです。また、お母さんたちに限らず、ベテランで定年退職した人たちも、質の高い仕事をする人が多いので、同じ理屈で復帰してもらおうと思ったのだとか。

世間が障がい者に抱く勘違い

さて、こうした流れの中で、ある時に客先で「福祉の人たちだけが集まってやっている事業」を眼にしたそうです。高齢者や障がい者の方々”だけ”で仕事をしている…と。その状況を見た時に、彼は「これをIT業界でやれば、多くの人から指名される会社になれる!」と確信したそうです。

世間一般の感覚からすると「障がい者の方がプログラミングって、大丈夫だろうか?」と思うかもしれません。事実、多くの障がい者の方々は単純作業の仕事に従事しているのが現状でしょう。しかし、賀村さん曰く「たしかに障がい者の中には単純作業しかできない人もいます。でも、そうじゃない人もいるんです」とのこと。

むしろ、耳の聞こえないベートーヴェンが名曲を生み出したように、障害を持っているからこそ、人並み以上に能力を発揮できる分野もあり、IT業界の仕事ではそれが現実に起きているそうです。それに、多くの方が単純作業しかやれていない現状は、技術よりも営業面に課題があるのだとか。つまり、自分では営業ができず、技術レベルの高い仕事を取れないんですね。

だから、営業面など運営側の課題を解決してあげれば、システム開発ではとてもいい仕事をしてくれる人がいる…そう言いながら、自社の社員を紹介して自慢しながら笑う賀村さんは本当に嬉しそうでした♪

税金を消費する人→納税者へ

さて、ここでとても大切なことがあります。元々、別の会社で働いていた障がい者の方って、月の報酬がヘタすると6,000円とかだったりするんです。それが、カムラックでシステム開発の仕事をすると、月12万円とかになったりするのだそう。この違い、スゴくないですか?

ちょっと言葉は悪いですが、税金を消費していた側の人が、納税する側に回るんです。そして、そんな人が増えていく…これって、ものすごく大きな社会貢献ですよね。こんな会社、新たに知ったら応援したくなりません? 人に紹介したくなりません? 事実、僕は紹介したくなって今、この記事を書いています(笑)

こうなると、建設業と同じような「多重下請け構造」が蔓延るIT業界においても、相見積もりを出されて買い叩かれるのではなく「あなたと仕事がしたい」と指名される会社になることができるわけです。これが、賀村さんが福岡はもちろん、東京をはじめ全国の出張先で「紹介したい人がいるんだけど、いつなら空いてる?」と声が掛かる理由でしょう。

多くの人から応援されている理由

いかがでしょうか? ポイントは、トップ自ら「社会の課題を解決する」という姿勢が、多くの人から応援される会社にしているのだと思います。とはいえ、もちろん賀村さんも最初から上手くいっていたわけではありません。

そこで後半は、最近出版された『中小企業、個人事業主だからこそできる!事業と未来を育てる、つながりの営業術 ~地方でIT×障害者支援事業を起業して100人のチームを作った現場に学ぶ、今日からできる小さな工夫~』という長い長いタイトルの著書とともに、僕らが見習うべきポイントを3つ紹介したいと思います。お楽しみに!

この記事の執筆者

寿コミュニケーションズ株式会社代表取締役/寿防災工業株式会社代表取締役社長。読者1万人超の当メルマガ『THE GO-GIVER』発行人であり、福岡で42年続く社員53名の防災設備会社 二代目。1982年生まれ。福岡県出身。筑紫丘高校→九州大学工学部卒(修士)

新卒でトヨタ自動車に入りマークXやクラウンのモデルチェンジ、バンパー塗装工場の新設を担当。4年目で退職し半年のニートを経て教育ベンチャーのダイレクト出版へ転職。1通のセールスコピーで累計2万人超の新規顧客を獲得したマーケティング経験は宝。マネージャーとなりメンバーから総スカン喰らった経験も宝。事業部が年商7億となった5年目、独立して寿コミュニケーションズを創業。

WEBメディア事業のお客様からの依頼でDMサポート事業を始めたら、紹介だけで受け切れないほど仕事依頼があり、現在は新規クライアント受付停止中。BtoB無形商材に特化したDM戦略&戦術が強い。「人の命と建物を火災から守り地域の街づくりに貢献する」寿防災工業株式会社で2022年11月1日、代表取締役社長に就任。