FROM 安永周平
ちょっと想像してみてください。
今、世界各国の人々が乗った豪華客船が沈没しかかっている。しかし、乗客の数に比べて、脱出ボートの数は足りない。そのため船長は、沈みゆく船から乗客の命を救うために、海に飛び込んでもらわなければならない。どうすれば一刻も早く飛び込んでもらえるだろうか?
さて、もしあなたが船長だったら…こうした状況の時、乗客にどんな言葉をかけるでしょうか。何と言えば、人は動いてくれるでしょうか?様々な国の国民性を知り尽くした船長は、考え抜いた末に、それぞれの国の乗客に対して、次のように言って説得しました。
アメリカ人に対して…
「今飛び込めば、あなたはヒーローになれますよ。」
イタリア人に対して…
「飛び込んだら、たくさんの女性にモテますよ。」
ロシア人に対して…
「海にウォッカの瓶が浮いていますよ。」
ドイツ人に対して…
「ルールですから、飛び込まなくてはいけません。」
フランス人に対して…
「決して海には飛び込まないでください。」
そして、日本人に対してはこう言いました。
「ほら、みんな飛び込んでいるじゃないですか。」
さて、ご存知の方も多いかと思いますが、これは「沈没船ジョーク」と言われており、様々な国の国民性を端的に表した有名なジョークです(※そしてあくまで1つの例で、詳しくは「沈没船ジョーク」で検索するとたくさん出てくるのでご参考に)。ただ、ジョークとはいえ…何となく当たっていると思いませんか?(笑)
特に日本人に強く見られる原則
日本人は、横並びの意識が強いと言われています。「皆がそうしているから…」「信頼しているあの人がこう言うから…」といった理由で、自分の意思とは関係なく決断・行動してしまうことも多いです。「赤信号、みんなで渡れば怖くない。」というフレーズは、日本人なら誰もが聞いたことがあるはずです。
そして、勉強熱心あなたは既にお気付きかと思いますが…名著『影響力の武器』の著者でもあるロバート・チャルディーニ博士が言う『社会的証明』の原理です。この原理によれば…
「人はどう動けばいいかわからないとき、無意識のうちに他者、特に共通点のある他者を参考にしがちだ。」
と言われています。先のジョークの例で言えば、船長が日本人の乗客に直接「飛び込んでください。」とお願いするよりも、「第3者が飛び込んでいる」という事実を示す方がずっと効果的…というわけです。そして、お気付きかもしれないが、これはあなたが見込み客と話をする時にも当てはまります。
見込み客は営業マンを警戒している
多くの場合、見込み客はあなたのセールストークを警戒しています。そして、ほとんどの営業マンが、このことに頭を悩ませています。しかし、ここまで読んでくれたあなたは、その解決策に気付いているのではないでしょうか。
ボブ曰く、その解決策とは「多くの人のお墨付きをもらうこと」です。あなたの人柄、扱っている商品の質、そして購入後のアフターケアなど、見込み客にとって大切なポイントは全て「あなたの主張どおりで申し分ない」と、多くの人に証明してもらいましょう。現に、優秀な営業マンには、既存の顧客からの「推薦状」や「感想」を集めている人も多いです。
あなたのセールストークより効果的なもの
その商品を買うことがあなたの利益になる以上、相手が少なからず猜疑心を抱くのは自然なこと。であれば、商品を買うか迷っている相手に対して、あなたが直接、商品の素晴らしさを力説するのと、利害関係のない第3者…つまりは、相手の友人や知り合い、同僚、あるいは相手が信頼・尊敬している人が力説するのとでは、いったいどちらが効果的でしょうか?
見込み客の不安・恐怖を取り除くために「第3者の裏付け」ほど効果的なものはありません。特に、見込み客と共通点がある人や、影響力の強い中心人物の裏付けほど効果的で「自分も買って大丈夫だ」と思ってもらえます。であれば、見込み客にとって「信頼できる紹介元」がお墨付きをくれる紹介経由の営業が効果的なのも頷けますね。
第3者の力を借りよう
ちなみに、これは人を褒める時も同じです。人は面と向かって直接褒られるよりも、「◯◯さんが、あなたのことを褒めていましたよ。」と言われた方が嬉しいものです(あなたも、そんな嬉しい経験をしたことはあるのではないでしょうか)。そして、褒められた人はもちろん、その言葉を伝えた人も、実際に褒めていた第3者も、みんな気持ちがよいものです。まさに、近江商人の言う『三方よし』の関係であり、営業の世界ももっとこうあっていいと思いませんか?
あなたの商品、そしてあなたのことを話してくれる人を見つけましょう。全ての人は250人規模の勢力圏を持っています。正しいプロセスを続けていれば、あなたのことを見込み客に紹介してくれる人はきっと見つかるはずです。
PS
影響力を高める方法について知りたい方は、こちらがオススメです
PPS
ちなみに先の沈没船の話ですが…日本人でも「関西人」を説得するときだけは違うそうで。関西人に飛び込んでもらうために最も効果的なのは「阪神が優勝しましたよ!」と言うことなんだとか(笑)