社長を説得できる男の条件

FROM 安永周平

以前、知り合いに薦められた本を読んでいたら面白いエピソードが載っていました。ある研究チームが「ずば抜けて高い業績を上げている人々について研究し、彼らの行動をそっくりコピーして他の人に教えることはできないか?」と考えたそうで、25年間、累計2万人を対象として調査が行われました。

まず、様々な組織や職場で「最も高い業績を出している同僚は誰だと思うか?」という質問を投げかけていきました。他の人と比べて”圧倒的な影響力”を持つ人物を探し出すためです。集めた回答を分析し、そこで挙げられた名前をリストにまとめていくと、あるパターンが浮かび上がってきました。

圧倒的な影響力を持つ人物とは?

1つのパターンは「2〜3人の同僚から名前が挙がる人」です。時には5〜6人の同僚が名前を挙げる人もいました。ただ、彼らは影響力からすると優秀だとは言えますが、誰の目から見ても”トップ・パフォーマー”だというには物足りません。悪くないけど、圧倒的ではないのです。

ところが、それとは別にもう1つ、明らかなパターンがありました。それは、30人以上…あるいはそれ以上の同僚から名前を上げられる人々です。誰が見ても、明らかに”最高のパフォーマー”と呼ぶに相応しく、その組織において圧倒的な影響力を発揮していました。その中には管理職の人もいましたが、そうではない人も多かったのです。

その男の名前を山岡としよう…

そうした影響力の強い人物の中で、特に研究チームの関心を引いた男性がいます。彼の名前を仮に「山岡」としましょう。彼はある会社の副社長で、同僚から並外れた影響力を持っていると評価されました。チームは、その理由を突き止めるために、職場での彼を観察し始めたのです。

しばらくの間、山岡の行動は普通でした。というよりも、他の経営幹部と特に違う様子はありませんでした。電話を取ったり、部下と話をしたりと、人当たりのいいごく普通の仕事ぶりでした。山岡を観察し始めて1週間ほど経った時、研究チームのメンバーは、彼が本当に他の人と異なるのか疑い始めていました。彼は影響力があるのではなく、単に人気があるだけじゃないか…と。

しかし、ある日の会議のこと…

そんなある日、会議で社長を含む経営幹部が参加して、来年度に予定している本社の移転先を話し合っていました。同じ市内にするか、他県にするか、あるいは海外へ移すのか…と。まず初めに、2人の執行役員が自分の考えと候補地について説明しました。参加者からは厳しい質問が飛びました。曖昧さや詰めの甘さは許されず、徹底的に議論されました。

そこへ突然、社長が口を挟みました。そして、あろうことか自社のメリットが少ないばかりか、地価や交通面でも明らかに”問題アリ”の候補地にしようと言い出したのです。当然、幹部連中は反対しますが、社長の反応は素っ気ないもの。社長はトップの権力を行使し、自分の考えを曲げるつもりはありません。言い出したら聞かないのです。

反対する幹部をギロリと睨み、眉をピクリと動かして「これは決定だ、文句がある奴は言ってみろ」と言わんばかりです。ほどなくして、誰も質問する者はいなくなり、社長の決定が受け入れられることになりました。いや、正確には”受け入れられたように見えた”のです。山岡が話し始めるその瞬間までは。そして、それはこんな一言でした。

「社長。少し確認したいことがあるのですが、よろしいですか?」

会議の流れが変わった時

幹部連中は凍りつきました。息を呑んでその状況を見守っていました。しかし、山岡は彼らの様子など気にすることなく、そのまま続けました。彼の話のポイントは「社長が自ら決めた社内の意思決定ルールを無視しているように見える」「社長は自分の権力を使ってさりげなく、自分の出身地に本社を移転しようとしている」というものでした。

続けて山岡は、たった今、目の前で起きた事実を説明しました。微妙に緊迫した空気の中で、山岡が数分間にわたる話を終えた後、社長はしばらく沈黙していましたが、やがて頷きながらこう言いました。

「君の言う通りだ。自分の意見を押し付けそうになっていたよ。もう1度やり直そう。」

難しい局面を打開する力

山岡は他の幹部たちと同じように黙り込んだりはしませんでした。だからといって自分の意見を押し殺そうともしませんでした。結果的に経営陣は適切な移転先を決定することができましたし社長は山岡の率直さに感謝することになりました。こうした影響力を持つ人物が1人いるだけで、結果は180度違ったものになり得るのです。

もしかすると、こんなことができる人間をあなたも知っているかもしれません。僕は個人的に1人知っていて、よく相談に乗ってもらうのですが…本当に的確な意見をくれます。物事を前に進めるため、自分が成長するために、今このタイミングで本当に必要なことは何かを第3者の眼で気付かせてくれるんですね。自分だけでは難しいことが、人の助けを借りることで可能になる…と。

自分を成長させてくれる人

それに、強い影響力を持つ人物は、周囲の人を成長させてくれます。先の例で言えば、社長も山岡がいることで成長するわけです。よく「自分が変わることでしか状況は変わらない」なんて言われますが、自分を変えるのがどれほど難しいのか、僕らは知っていますよね。ところが、たった1つの出逢いが、変えられなかった自分をいとも簡単に変え、結果として人生を大きく変えてしまうことがあります。影響力の強い人物との出逢いは、まさにそれです。

ありがたいことに、僕もこの数ヶ月間で自分を変えてくれた方が数名います。そうした人との出逢いは本当に大切にしたいと常々思います。教育者・哲学者として有名な森信三先生は「人間は出逢うべき人には必ず逢える。一瞬遅からず一瞬早からず」と言っています。そのためには、自分から行動を起こすことを怠らないようにしたいですね。

PS
なお、先の山岡氏のような影響力を発揮するには条件があります…

URLをコピーする
URLをコピーしました!

この記事の執筆者

寿コミュニケーションズ株式会社代表取締役/寿防災工業株式会社取締役。読者1万人超の当メルマガ『THE GO-GIVER』発行人であり、福岡で40年続く社員52名の防災設備会社 二代目。1982年生まれ。福岡県出身。筑紫丘高校→九州大学工学部卒(修士)

新卒でトヨタ自動車に入りマークXやクラウンのモデルチェンジ、バンパー塗装工場の新設を担当。4年目で退職し半年のニートを経て教育ベンチャーのダイレクト出版へ転職。1通のセールスコピーで累計2万人超の新規顧客を獲得したマーケティング経験は宝。マネージャーとなりメンバーから総スカン喰らった経験も宝。事業部が年商7億となった5年目、独立して寿コミュニケーションズを創業。

WEBメディア事業のお客様からの依頼でDMサポート事業を始めたら、紹介だけで受け切れないほど仕事依頼があり、現在は新規クライアント受付停止中。BtoB無形商材に特化したDM戦略&戦術が強い。本業は「人の命と建物を火災から守り地域の街づくりに貢献する」防災設備会社で事業承継を前提に組織改善と採用に奮闘中。