若き社長が2つの球団を優勝に導いた理由

FROM ボブ・バーグ

周囲の人々を率いていくリーダーにとって、信頼とはいったい何だろうか。職務上、リーダーの立場にある人は、周囲の人々に仕事をしてもらう代わりに給与を支払っている。ゆえに、対価を支払えば人を動かすことでき、信頼なんてのは言ってみれば副産物的なもの。そういうふうに考えているとしたら、それは大きな間違いだ。

様々な研究で明らかになっているのは、この信頼をないがしろにしている組織は、収支を含めさまざまな点で苦労をすることが知られている。一方で、リスペクトをもって人と接し、信頼を構築していくような組織は、これとはまったく別の結果を得ることができる。

優勝から遠ざかっていた2つの球団を世界制覇に導いたオーナー

私の友人でランディ・スタルターという人物がいる。彼はベテランの教育者であり、また高校の体育指導者でもある。そんな彼が私にこんな話をしてくれたことがある。

ある日のこと。彼は家への帰り道の途中でラジオ番組の収録にでくわしたそうだ。なんと、その収録ではメジャーリーグ球団シカゴ・カブスのGM(ゼネラル・マネジャー)であるセオ・エプスタイン氏がゲストに招かれていた。すると、ラジオのパーソナリティがセオ氏に対して選手たちとどのように信頼関係を築いているかたずねたそうだ。

そのインタビューアーによれば、かつてのメジャーリーグの選手たちは誰一人として球団の経営陣に対して信頼していなかったそうだ。しかし、セオ氏は交渉においては決して選手を欺くことはせず、また代理人との契約も必ず守るようにしていたそうだ。加えて、契約期間などといった選手の求めていることを最大限叶えられるようにしていた。

そのようにして選手たちから着実に信頼を得たことで、彼は2つの偉業を成し遂げた。彼はメジャーリーグ史上最年少のGMでありながら、ボストン・レッドソックスを約86年ぶりのワールドシリーズ制覇に導いた。それにとどまらず、シカゴ・カブスでは約108年ぶりとなる優勝をもたらした。

信頼がないと多大なコストが生じる?

もちろん、彼に才能や知識があったことは言うまでもない。ただ、彼は何より各球団のエグゼクティブの多くが欠けていた「信頼」を集める人物だった。それが成功の要素だったことは間違いない。信頼を得ること。これを念頭に置いた彼のふるまいこそが、チームを成功に導いたもっとも大きな要因だったと言えるだろう。

また、見方を変えれば信頼が低いがために生じる摩擦がセオ氏が率いたチームにはなかったのだ。ちなみに、この摩擦とはスティーブン・M.R.コヴィーが著書『スピード・オブ・トラスト』の中で述べている「信頼税」と呼ばれる考え方になる。例えば、相互の信頼が低いばかりにコミュニケーションエラーばかりが生じてしまう…そんなことも含まれるだろう。つまり、「信頼税」とは信頼が低ければ低いほど、そういったコストがまるで税金のように重くのしかかる。

信頼を獲得できれば、全体の90%は手中に収めている

野球界に限らず、彼のように信頼の獲得を念頭に置いてふるまうことができる人は、少なからずいる。リーダーとしてチームメンバーを心から気に掛け、その真心がチームメンバーにも伝わるとき、よりよい話し合いができる。ほかにもチームの団結力が高まるのでメンバー個々の能力以上の結果につながりやすくなる。また『リーダーは最後に食べなさい! 』の著者であるサイモン・シネックはこうも言っている。

「信頼は、誰かが私たちの幸福を望んでいるという確信に対する生物学的反応なのです。」

当然だが、「私のことを信頼してくれ!」といくらリーダーが唱えても、得られるものではない。信頼とはみずからの振る舞いによって自然に集まり、獲得していくものだ。短期的には何を言うか。長期的には、何を成すか。そして、究極的にはその人物の在り方によって、信頼というものが醸成される。

先ほどのセオ氏は、信頼の大切さを熟知していたからこそ、若いながらも野球界ですばらしいキャリアを築くことができたと言えるだろう。リーダーが信頼を獲得できたなら、全体の局面の90%はすでに手中に収めたも同然である。そのことを彼は知っていたのかも知れない。

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信頼を集めるリーダーはここが違うものです…

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この記事の執筆者

アメリカでは伝説的な元トップ営業マンであり、対人関係・影響力の行使に関する第一人者。「21世紀のデール・カーネギー」の異名を持つ。

現在は経営コンサルタント・講演家としても人気を博し、元大統領や著名な政治家からも助言を求められる。2014年には米国経営協会(AMA)からビジネス界のリーダー上位30人の1人に選出されている。

主なクライアントはゼネラル・エレクトリック(GE)、リッツ・カールトン、レクサス、アフラック、MDRT、全米不動産協会等。フォーチュン500社に名を連ねる大企業からも絶大な支持を受ける。

著書はこれまで世界21カ国語に翻訳され、累計発行部数は100万部を超えている。累計20万部の『Endless Refferals』や世界的ベストセラーとなった『THE GO GIVER』などは全米の企業で多く研修マニュアルとして使われている。フロリダ在住。