From 安永周平
以前、ある記事を読んでいたら「現在の日本のGDPは世界で3位だけど、間もなくドイツに抜かれる」といった記述がありました(※ちなみに1位は米国、2位は中国です)。ドイツの人口は8000万人で、日本の3分の2です。それなのになんでGDPで抜かれそうになっているのかというと、日本は「生産性」が落ちているからだと。
日本の生産性は世界で30位くらい
つまり、生産性(1人あたりの生み出す付加価値)が先進国の中でも低いのです。個人的には、数年前まで人口13億人を超える中国よりもGDPが高かった日本、スゲェ…とも思うのですが、現状はGDPが相対的にも下がってきており、これが問題視されているわけですね。
それもあってか、最近は「働き方改革」とか「生産性向上」といった言葉を色んなところで聞くことが増えました。ただ、働き方改革というのは結局のところ、政府に頼るようなものではなく、会社トップが腹を決めてやり切るしかないと思うのです。そして、1人1人が付加価値の高い仕事をするには、いったいどうすればいいのかを考えていたところ…
生産性向上の鍵を握るマネージャー
マネジメントやリーダーシップに関する知見で定評があるユーゲン・アペロ氏が面白いことを言っていました。彼はうちで提供中の『月刊GO-GIVERS』にもゲストとして出演してもらったことがあるのですが(※2018年6月号)、彼曰く「スタッフの生産性の鍵を握るのはマネージャーだ」ということ。
というのも、数十年前は「上司の命令に従うことが当たり前」という風潮で、職場環境やマネジメントのレベルはあまり問題になりませんでした。これは米国もそうですが、日本ではより顕著でしょう。経済が右肩上がりだった高度経済成長時代においては、給与や福利厚生といった「外的モチベーション」で働く人が多かったはずです。
生産性を向上させるものは何か?
しかし、現在は決して右肩上がりの状況ではありません。市場の大きさだけで言えば、人口減少によって国内は確実に縮小していくでしょう。そんな中で、「仕事でに自分が成長できるか」「会社のミッションに共感できるか」といった内的モチベーションに重きを置く人が増えてきています。
そうなると、必然的に職場環境というのは重要になってきます。なぜなら、職場が快適なら仕事に対して前向きになり、仕事の生産性も上がるからです。加えて現在は、1人1人のスタッフを価値ある人材として扱わなければ、その人の生産性を最大限に発揮することはできないんですね。このあたりは…そう、まさにマネージャーが鍵を握っています。
また、会社の風土(カルチャー)というのは、上から下へと浸透していきます。社長から幹部、幹部からスタッフへ…と。逆はあり得ません。ですから、社長が先陣きってカルチャーの浸透に当たるのは大前提ですが(痛ダダダダ…)、組織を支える幹部・マネージャーの姿勢はとても重要です。
マネージャーは「庭師」のようなもの
先のユーゲン氏は、マネージャーは「職場環境」に責任を持つべきだと言います。職場環境やチームメンバーの状況を把握し、働きやすい職場づくりをしていくのがマネージャーの仕事だと。これはまさに、花や植物がすくすくと育つような環境をつくり、メンテナンスしていく庭師のような仕事です。ですから、マネージャーは庭師のようでなければいけないと。これには、なるほどな…と思いました。
もちろん、内的なモチベーションだけでは不十分です。仕事をする上で、給与やボーナス、福利厚生といった外的モチベーションも必要でしょう。それに、自分が業績を上げて給与が上がるのなら、スタッフからしたら、それは自分の仕事の価値が認められたということ。これはこれで素晴らしいことです。いずれにしても、どちらか片方だけでは足りないということ。
部下を育てるよりも大切なこと
繰り返しますが、メンバーへの思いやりも含め、こうした職場環境の改善はとても重要でしょう。これをやることなく、ただ機械的に部下に仕事を教えて覚えてもらっても、言われた以上のことをやる人間は育たないのではないでしょうか。
あなたに部下がいるなら、まずは彼ら彼女ら1人1人を価値ある人間として扱い、自尊心を大切にしながら接してみてください。上司のちょっとした対応が変わるだけで、驚くほどやる気を出して生産性を向上させる人もいるものです。そして、部下が「何にモチベーションを持っているか?」を理解していけば、チーム全体の生産性だって上がっていくと思うのですが、いかがでしょうか?
PS
「部下への接し方=お客様への接し方」とも言えるのはなぜでしょうか?
↓