From 安永周平
ある小学生の男の子の話です
テーブルの上には、お皿に山盛りになった「かっぱえびせん」があります。お母さんからは「食べちゃダメよ」と言われています。男の子は最初、お母さんの言いつけを守り、食べずにいました。しかし、だんだんとお腹が空いてきます。そして「こんなに山盛りなんだから…1つくらい食べてもお母さんにはバレないだろう」と思い、1つ食べてしまいました。
さて、困ったことにそれがとても美味しいんです。しかも予想通り、お母さんはつまみ食いに気付いていません。「もう1つくらいいいか」と思い、男の子はまた食べてしまいます。さすがは”やめられない止まらない”かっぱえびせんです。キャッチコピーのとおり、男のこはやめられない止まらない勢いで次から次へと食べてしまいました。
最初は少し食べただけ。ですからお母さんも気付きませんでした。しかし、次から次へと食べているとさすがに山盛りだった山の形が変わります。そしてとうとう、お母さんに見つかってしまいまい、こっぴどく怒られてしまいました…
かっぱえびせんなら笑えるが、現金は…
とまぁ、こんな経験あなたにもあるのではないでしょうか。ちなみに僕は甘いものが大好きだったこともあり、こんなことは日常茶飯事でした。優しかった母は3年ほど前に逝ってしまったのですが、当時のことを思い出すとなんだか懐かしいです。
それはさておき、このえびせん現象、家庭で子供がやるのは微笑ましいですが、会社で大人がやると大変マズいことになります。端的に言えば、金銭がらみの不正が起こるような職場ではマズいのです。たとえば、経理担当者が不正をして現金を懐に入れてもバレない…そんな会社であってはいけませんよね。当たり前のことですが、実際に起こっている会社もあります。
着服はどうして起こるのか?
売上から原価を差し引けば、いわゆる「粗利」が出てきますが…もし不正が行われていたら、この粗利も正しく算出されません。原価管理の甘い会社では、先のかっぱえびせんのような状態が起こり得るのです。たとえば、顧客や協力会社と社員が直接コストについてやり取りする場合、社員にとっては山盛りのえびせんが目の前にあるのと同じです。社長からは当然、その現金には手を付けてはいけないと言われています。
社員は、最初は社長の言いつけを守って手を付けないでしょう。ところが、月末で自分のお金がなくなったり、どうしても必要なものが貯金で買えなくなったりした時「ちょっとくらいならバレないだろう」という悪魔のささやきが聞こえたらどうでしょうか?会社のお金に手を付けてしまいかねません。
その時に社長や経理担当が気付いて注意されると、そこで止めるでしょう。ところが、誰も気付かなかったら、着服がかっぱえびせんのように「やめられない止まらない」状態になってしまいます。そして、相当な金額の着服がなされた後、ようやく会社が気付いて、その従業員は会社を辞めざるを得なくなります。会社は社員を1人失うわけです。
不正が起こるのは誰の責任?
もちろん、着服した社員が悪くないわけではありません。着服は悪いこと、当たり前です。でもこれは本来、社長の責任だと思います。目の前に山盛りのかっぱえびせんをおいて、全く管理していない状態だと…何が起こるか想像できるはずです。性善説で社員を信じたい気持ちはわかりますが、不正が起こる環境を放置してしまっているのは経営責任です。
知り合いの社長の話ですが、会社に税務調査が入ったまさに当日、経理担当者が「今日で辞めさせていただきます」と言って荷物をまとめ会社を去ったそうです。あり得ない話ですが、ほぼ間違いなく自分が不正(着服)をしていたからでしょう。中小企業ではこうしたガバナンスの強化が後手後手になってしまいがちですが…現実に起こることは認識しておく必要があります。
不正が起こらない仕組みが必要
社員が悪い心を起こすような原価管理をしている社長が悪い。だからこそ、原価はしっかり見ないといけません。不正があった時には気付くような仕組み・体制をつくること。原価管理をほったらかしてる自分を棚に上げ、不正が起こった際に「ふざけるな」と言うのでは…いけませんね。経営とは会社の全てに責任を持つこと。大変な道ではありますが、私も自戒を込めて一歩一歩精進していきます。
PS
ちなみに、社長が社員との接し方を間違えると…こんな風に結果が180度違うものになってしまいます。
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