銀行の主張を覆した社長の対応

From 安永周平
こんな話があります。ある小さな会社が、大手銀行と契約交渉をしようとしていました。銀行側は、その商談にわざわざ遠方から腕利きの弁護士を呼び、交渉の専門家も同席させました。さらには支社長クラスの人間が2人も参加し、合計8人のチームで自分たちの主張を押し通そうとしていました。
会社側のメンバーは、事業のサービス品質を上げつつコスト削減をしようとしていたのですが、この大手銀行の要求とニーズに圧倒されました。しかし社長だけは、いざ交渉の場に就くと、もはや臨戦態勢とも言えるような銀行側の面々に、次のように言いました。

社長が銀行側にかけた言葉

「まずは、そちらで思っているような契約書を書いてみてほしい。そこから、当社があなた方のニーズや欲求を十分に理解しているかどうかを確認させてほしい。そのニーズや欲求に対してこちらの答えを申し上げたうえで、価格についての話を始めたい」
この社長の言葉に、銀行のメンバーは逆に圧倒されてしまいました。自分たちが好きなように契約書を作るチャンスが与えられたことに、仰天してしまったんです。そして、銀行側がそれをまとめるのには3日間かかりました。そして、銀行側からその契約書を提示されると、社長は次のように言いました。

自分たちの主張をする前に…

「まず、あなた方の望んでいることを、こちらが理解しているかどうかを確認しましょう」
そう言って、契約書の項目を1つずつ置いながら、内容を、言葉を換えて言ったり、気持ちを汲んだりしながら、こちらが銀行側の立場を理解していることを徹底的に相手に示しました。お互いに話し合い、コメントを加えるなどして、彼らの立場を徹底的に理解したうえで、今度は自分たちの立場を説明し始めました。すると…

彼らは耳を傾けてくれました

銀行側のメンバーも、その会社側の主張に耳を傾けてくれたのです。最初は堅苦しく、お互いに信頼レベルの低い雰囲気で始まった交渉が、お互いに口撃して戦う必要もなくなり、相乗効果を求める建設的な環境に変わっていったのです。
そして、会社側の説明が終わった時、銀行側はこう言いました。「御社と取引したい。価格を教えてくだされば、契約書の調印します」と。

理解してから理解される

もしかするとあなたは、このエピソードを名著『7つの習慣』の第5の習慣「理解してから理解される」の中で読んだことがあるかもしれません。そして、まず相手の立場を徹底して理解することによってのみ、Win-Winの関係というのが生まれることを経験からも知っているかもしれませんね。
実際、相手の話を深く聴くようになればなるほど、人と人との間には、物事の見方に大きな違いがあることに気がつくと思います。あなたは相手の人格を見ているのに対して、相手は会計に基づいた数字・利益だけを見ているのかもしれません。あるいは、あなたは会社における肩書で自分を語っているのに対して、奥さん(旦那さん)は家族の一員としてあなたを見ているかもしれません。

「僕らの信念=事実」ではない

物事の見方、解釈の仕方というのは人によって大きく違いがあることがあります。それなのに、僕らは長年に渡って自分の信念体系に基づいて生活し、それを”事実”だと思い込み、その事実が分からない(分かってくれない)人の人格や能力を否定したり、疑問視したりしてしまいがちです。
複数の人がいれば、1人1人が違った信念を持っていて当たり前です。その人達がチームとして一緒に何かを成し遂げようとするなら、絶対に必要なことがあります。個々人の信念、価値観を超えて、深く建設的なコミュニケーションを取り合い、問題を解決しながら、協力しながらWin-Winの関係を実現していく…そのために必要なこととは何でしょうか?

先に相手を理解しよう

賢明なあなたはお気付きだと思いますが、それこそが「相手を理解する」というプロセスであり、習慣です。日常的に、ごく自然とこれができるようであれば、人と協力関係を築くことはそれほど難しくなくなるでしょう。
相手を口撃して、こき下ろして、論破して説き伏せる。そんな信頼関係をぶち壊すようなアプローチは不要になります。むしろ、そうやって相手を支配したり、心理操作したりしようとするから、人を動かすことができなくなるんです。期待以上のことをしてもらえることがなくなるんです。
人を動かす人間になりたい、人に気持ちよく動いてもらいたい…そんな風に思うのであれば、最も重要なのは「相手を理解すること」でしょう。次から次へと喋って論破して説き伏せることではありません。相手の話に耳を傾け、信頼を勝ち取るのが先だということを僕らは忘れてはいけないと思うのですが…さて、あなたはどう思いますか?
PS
目先の利益だけに固執しないように生きたいものですね。『月刊GO-GIVERS』ではそうしたビジネスパーソンの事例を多数取り揃えていますので、よろしければ確認してみてください。

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この記事の執筆者

寿コミュニケーションズ株式会社代表取締役/寿防災工業株式会社取締役。読者1万人超の当メルマガ『THE GO-GIVER』発行人であり、福岡で40年続く社員52名の防災設備会社 二代目。1982年生まれ。福岡県出身。筑紫丘高校→九州大学工学部卒(修士)

新卒でトヨタ自動車に入りマークXやクラウンのモデルチェンジ、バンパー塗装工場の新設を担当。4年目で退職し半年のニートを経て教育ベンチャーのダイレクト出版へ転職。1通のセールスコピーで累計2万人超の新規顧客を獲得したマーケティング経験は宝。マネージャーとなりメンバーから総スカン喰らった経験も宝。事業部が年商7億となった5年目、独立して寿コミュニケーションズを創業。

WEBメディア事業のお客様からの依頼でDMサポート事業を始めたら、紹介だけで受け切れないほど仕事依頼があり、現在は新規クライアント受付停止中。BtoB無形商材に特化したDM戦略&戦術が強い。本業は「人の命と建物を火災から守り地域の街づくりに貢献する」防災設備会社で事業承継を前提に組織改善と採用に奮闘中。