FROM ボブ・バーグ
だれかと話をするときというのは、つい自分本位に語ってしまいがちだ。私たちビジネスパーソンは、まずは相手の必要としていること、欲していることを知り、そのうえでこちらの製品やサービスをプレゼンすることが重要なことは頭では理解していることだろう。しかしそれでも、つい自分の会社のことや商品・サービスに熱意があるあまり自分のことを中心として話を展開してしまうなんてことは珍しいことではない。
これは、ダイレクトメールを書くときにもあてはまる。相手のことを中心として話を展開することが望ましいと知りながらも、いざ書き上がったものを確認すると「弊社は……」といった表現が多くなっていたり、商品説明が内容の中心になってしまっていることもあるだろう。書き終えたあとで、すごい分量の自分中心の話を相手中心の内容に置き換えるのがとても大変だ、というのはよくある笑い話でもある。
そもそも相手は自分の話にしか興味がない?
私とジョン・デイビッド・マンが共同執筆した『THE GO-GIVER LEADER(邦題:ひとを動かす技術』という本の中にこんなシーンがある。それは、主人公のベンがメンターに相談するというものだ。ベンはクライアントの会社の経営が傾いていることを案じ、自分の抱くアイデアをクライアントの会社の重役に納得してもらいたいと考えているものの、どうすれば説得できるかがわからないというものだ。ベンはそのことを次のようにメンターに相談した。
「僕の提案は、彼らが今のスランプから脱出するために必要なはずなんだ。これこそはわれわれがとるべき道なんだよ。それが僕には五感を通してわかるんだ!僕の話を聞いてさえもらえれば、必ず彼らは復活できるはずだよ」
すると、メンターはこう尋ねた。
「今の話の中で、だいたい何回くらい”僕”という代名詞を使ったかわかる?」
さて、いかがだろう?もちろん、このことはベンのように重役たちを説得する場面だけに限らない。セールスもまた相手に望む行動をとってもらうために、相手に動いてもらいたい場面でメッセージを発信する。繰り返しになるが、「私」という言葉をふんだんに使うより「相手」を主体とした話をするほうが、圧倒的に影響力を高めることができる。大事なのは、常に相手のことをトークの主役とすることになる。
あなたの話は25%。残りの75%は…
もしかすると、セールス関わる人々ならば、「セールストークをしているうちはいい営業マンとは言えない」という言葉を聞いたことがあるかもしれない。これはまさしく本質をついている。先ほどから述べているように相手に影響力を行使できるかはあなたがどれだけ相手本位になれるかにかかっている。ことプレゼンにおいては話すことよりも相手の話を聞くことが鍵になる。相手が進んで楽しく語ってくれるような営業マンは相手のニーズ、願望、希望を手に取るように理解することができるからだ。
電話営業で見込み客を開拓する際も、もちろん”相手に話してもらうこと”が重要になる。これには2つの理由がある。1つは上記の理由によるものだ。そして、もう1つは自分が楽しく話している時に電話を切りたい人なんて思う人は誰もいないだろう。
こうした考え方は見込み客の開拓や商談といったあらゆるセールスの場面において欠かせない。理想的なセールスとは、全体の時間のうち25%があなたの話で、残りの75%が”聞くこと”にある。すなわち相手のことに多くの時間が費やされるべきだ。
偉大なセールストレーナーであるJ・ダグラス・エドワーズの言葉に「質問こそ答えだ」というものがある。この言葉の意図するところは、「セールスでは、質問をする人間が会話をコントロールする」という意味でもある。
「会話をコントロールするのは話す人なんじゃないの?」と思う人もいるかもしれない。一般的にはそうかもしれない。しかし、これまでの私の話を聞いてもらえれば納得してもらえるだろう。正しい質問を投げかけ、話を聞くことこそが、相手にこちらの望みどおりに動いてもらう方法なのだ。優れた営業マンが、”私は…”と自分の話をしないのはここに理由がある。優れた営業マンは決して自分の話で相手を”押したりしない”、質問など聞くことで相手を”引くこと””引き寄せる”ことを意識している。
振り返って欲しい。あなたは相手との会話の中で、あなたの話はどのくらい占めているだろうか?一方、相手の話はどれくらい占めているだろうか?
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