それは相手が求めてるの?

From 安永周平

よく、人にやる気を出してもらうために「人参をぶら下げる」なんて言葉が使われたりしますよね。馬はニンジンが好物なので、走っている馬の鼻面にぶら下げれば速く走るだろうと言われることから、やる気を出してもらうための物や金を提示する意味で使われます。目論見どおりにいけば、馬はニンジンに惹かれて荷車を丘の上まで引っ張り上げてくれるでしょう。

ニンジンが機能しない5パターン

ところが、企業経営における目標設定と利益改善のための「成功する経営のコツ」を説くチャールズ・A・クーンラット氏によれば、こうしたニンジンがさっぱり機能しないケースが5つもあると言います。それはいったいどんな場合でしょうか? そして、そもそも人間にもニンジンをぶら下げることは効果的なのでしょうか? 今日はそのあたりについて見ていきましょう。

①馬がお腹を空かせていない時

1つ目は、馬がお腹を空かせていない時です。たとえば、月500本のニンジンで満足する馬に、月3000本を与えるからもっと働けと言っても、馬は自分のニーズである月500本分の働きに合わせるかのように、ノロノロと仕事をするだけです。つまりはハングリーじゃないのです。 これは、不動産業界で実際に起こっています。それまで月収20万円だった男性が不動産の営業に雇われたとしましょう。社長から「3日に1件は契約を取り付けてこい」命じられた彼は、その通りにします。

ところが、ここで社長が大きな間違いを犯しました。ラッキーにも初日に家が1件売れた彼に、手続きをすべて任せてしまったので、彼に60万円の手数料を支払うことになったのです。 たった1日で60万円。以前の収入の3倍の額が1日にして手に入りました。明らかに自分の”セルフイメージ”を超えています。そして、自分の給料がそれに伴って上がるイメージが持てない彼は、その成果に満足して、その間は仕事に励まなくなるというわけです。

②ニンジンのサイズが小さい時

次の状況は、ニンジンが充分なサイズじゃないために機能しないケースです。ニンジンを目の前にした馬は、振り返って荷車の中の荷物を一瞥します。そして、坂を登りながらこう考えます。「フン、あんなシケたニンジン1本で、この荷物をあの坂の上まで引っ張り上げろって言うのかい…まったく冗談じゃないよ」と。

③そもそも上り坂が急過ぎる時

3つ目は、上り坂が急過ぎる時に発生します。坂が急過ぎると、そもそも馬は物理的に登るのが不可能です。要するに、相手の能力以上の仕事を与えてもどうにもならないという話ですね。ただ、これについては講習を受けたり、新しい技術を学んだり、より詳しい商品知識を身につけたりすることで、解決に向かう可能性はあります。

④荷物が重すぎる時

4つ目は、荷物が重過ぎる時です。ぶら下がっているニンジンのサイズはよくても、荷物が重すぎると馬(人)はこう考えます。「そりゃあ、この仕事がいい稼ぎになるのはわかりますけどね。でも、そのために僕がいったい何社訪ね歩かなきゃならないか…あなた、分かって言ってます?」

⑤馬がニンジンを嫌いな時

さて、これは先のチャールズ氏が講演をしていた時に発見したケースです。モチベーションについて講演をしていた時、後方の席にいた1人の女性が立ち上がって「すみません、もしもその馬がニンジンを嫌いだとしたらどうするんですか?」と問いかけました。予想だにしない質問に、彼は思わず口ごもってしまったそうです。実はこの質問、報酬を与えることで人を動かすこと(インセンティブモチベーション)の本質を突いていました。

その報酬、本当に求められてる?

たとえば、もしあなたが営業部長だとして、部下に「営業成績トップになったら20万円のホームシアターセットをプレゼントしよう」と言ったらどうでしょうか? 映画好きの部下にとっては、家で迫力満点の映画が見られる…とても魅力的な物かもしれません。しかし、1つ問題があります。それを彼の家に設置するためには、40万円かけてリビングをリフォームしなければいけないことです。 つまり、部下は20万円のニンジンをもらっても、結局は40万円を使う羽目になります。

そう、部下はこのニンジンはお気に召さなかったのです。あるいは「今年1億円売り上げたら課長にしてやる」と叱咤激励するのはどうでしょうか? すると、部下は「うーん、課長ですか。給与は10%上がるけど、労働時間は3割増える。それにストレスで脳梗塞になる可能性が3倍になって、離婚率が6倍になる……そんなニンジン要らないな」と考えるかもしれません(苦笑)

相手が求めているものを与えよう

こうやって見ると、リーダーの立場にいる人は「ニンジンをぶら下げる」ことによって人を動かすのは考えものです。それに、ニンジンで動く人間は、次第に”より大きなニンジン”を要求するようになるでしょうし、それに応えていてはお金がいくらあっても足りません。このあたりに、報酬によって人を動かすインセンティブ・モチベーションの限界があります。

もちろん、お客様に対しても同じですね。さすがにお客様に人参をぶらさげる人はいないでしょうが、お客様が求めていないメリットをアピールしまくる人は確実に「ウザい」と思われます。最近だと、SNSでつながった瞬間に「〇〇に興味はありませんか?」と自社商品を押し売りしてくる人がそれですね。一流のビジネスパーソンがそんなことをするでしょうか?きっとしないでしょう。では、その代わりにどんなことをするのか…ぜひこちらを参考にしてみてください↓

 

PS
ちなみに、横浜の動物園『ズーラシア』が、実際に馬の目の前にニンジンをぶら下げて走るかどうか検証したそうですが…全然走らなかったそうです。現実は甘くないですね(笑)

URLをコピーする
URLをコピーしました!

この記事の執筆者

寿コミュニケーションズ株式会社代表取締役/寿防災工業株式会社取締役。読者1万人超の当メルマガ『THE GO-GIVER』発行人であり、福岡で40年続く社員52名の防災設備会社 二代目。1982年生まれ。福岡県出身。筑紫丘高校→九州大学工学部卒(修士)

新卒でトヨタ自動車に入りマークXやクラウンのモデルチェンジ、バンパー塗装工場の新設を担当。4年目で退職し半年のニートを経て教育ベンチャーのダイレクト出版へ転職。1通のセールスコピーで累計2万人超の新規顧客を獲得したマーケティング経験は宝。マネージャーとなりメンバーから総スカン喰らった経験も宝。事業部が年商7億となった5年目、独立して寿コミュニケーションズを創業。

WEBメディア事業のお客様からの依頼でDMサポート事業を始めたら、紹介だけで受け切れないほど仕事依頼があり、現在は新規クライアント受付停止中。BtoB無形商材に特化したDM戦略&戦術が強い。本業は「人の命と建物を火災から守り地域の街づくりに貢献する」防災設備会社で事業承継を前提に組織改善と採用に奮闘中。