From 安永周平
以前、とある方の出版記念講演に参加したことがあります。普段ならあまり縁がないような方の講演だったのですが、個人的に異業種の方から学ぶことはとても重要だと思っていますし、テーマが現在の日本にこそ必要な「リーダーシップ」に関するものだったので、興味があって申し込んでいたんですね。
ところが、会場に入った瞬間、私は「来る場所を間違えた」と思いました。聴講席に座っている方々は、何というか政財界の大物のようなオーラを放っており、2割くらいの方はなんと和装です(^_^;) しかも講演…というより、食事付きのパーティのようなイベントで、皆さんそれぞれの円卓を囲んで座っていらっしゃる。ネクタイは締めていたものの、自分の身なりがちょっと恥ずかしい。何というか、場違い感で居心地の悪さ最高潮です。
トップ交代で年商3倍&社員2倍
しかし、ここで帰るわけにはいきません(当然ですw)。「何のためにボブのコンテンツを学んでいるんだ…」と自分に言い聞かせ、勇気を持って、たまたま隣に座っていた紳士な方に話しかけました。既にあなたもご存知かと思いますが、初対面の相手に知ってもらい、気に入ってもらい、信頼してもらうためのスタートは、自分の話をすることではありません。相手の話を聴くことです。そのために、相手が気持ちよく喋れる質問をすることです。
それで、話を聴くと名刺を交換したAさんは、法人向けに通信設備の販売・工事をしている会社の代表取締役会長さんでした。元々は一部上場企業の部長職をしていたAさんでしたが、数年前にグループ会社である現在の会社の社長に就任したそうです。そして今年の6月、育てていた後継者に社長を譲り、自分は会長に退いたのだとか(素晴らしい!)。
その会社の当時の年商は4〜5億で社員は30人ほど。創業40年を超える会社なのですが、この規模の状態でもう20年以上も停滞していたそうです。それが、Aさんがトップになったここ数年で年商は12億を超え、社員数も倍になったそう。地場の建設業においては、目を見張る成長ぶりです。
いつの間にか聴くことに夢中…
最初はAさんに気持ちよく喋ってもらうために質問をしていたはずが…いつの間にか私は心底、その経営手腕について詳しく知りたくなって次々と質問をしていました(笑)。正直、まだまだ聞き足りないのですが、「またお会いしましょう」というありがたい言葉をいただいてその日は終わりました(※もちろん礼状も送りましたよ♪)。
そこで今日は、そんな経営者の大先輩からいただいたアドバイスのうち、私なりに印象に残ったポイントを3つほどあなたにも紹介したいと思います。会社を経営されている方、部門を率いるリーダーの立場の方は、よろしければ参考にしてみてくださいね。
会社規模が倍になった3つのポイント
ポイント1:利益が出る前に人を増やす
これは、口で言うほど簡単ではありません。多くの人は「利益が出たら人も増やそう」と考えるのが普通です。ただ、それを続けた結果、先の会社は20年以上も業績が伸びずに停滞していました。しかしAさん曰く、人を増やすことによって起こり得る最悪の事態を想定した時、それが会社にとって致命傷にならないのであれば、人を増やして仕事も増やそうというもの。
もちろん、これをやるには経営者としての度胸が要りますし、致命傷にならないようにコントロールするのも経営者の役目でしょう。ただ、結果としてAさんは、人を増やすことで仕事を増やし、会社を成長させることに成功したのです。これは「人から何かを与えられたいなら、まずこちらから先に与えなさい」というGIVERの精神に通じるものがありますね。順番が逆になるだけで、成果も180度変わることの実例を話していただきました。
ポイント2:顧客との接触頻度が高い仕事をする
元々、Aさんの会社でメインで行っていた設備は、1度設置すれば5〜15年は使えるものでした。ですから、この設備の工事だけをやっていたら、次にそのお客さんから受注できるのは最短でも5年後です。下手をすれば、この期間はお客さんとほとんどコミュニケーションすることなく過ぎてしまいます。
しかし、『ザイアンス効果』によれば、人は会えば会うほどその人に好意をもつようになるのです。他の条件が全て同じなら、人は知っていて、気に入っていて、信頼している人に仕事や紹介を回すのですから、お客さんとの接触頻度が少ない仕事は、普通にやっていればリピートに不利なことは明らかです。
ですからAさんは、基本的な技術は同じで、お客さんとの接触頻度が高い設備の事業をスタートさせたそうです。これによって、お客様との接触頻度が増え、気に入ってもらい、信頼してもらうことでリピート顧客が増えたとのこと。さらには、元々メインでやっていた設備が必要な取引先を紹介したりしてもらえるようになったのだとか。新規事業が既存事業を助ける形になるというのが素晴らしいですね。
ポイント3:社員がいい仕事をしたら皆の前で話す
Aさんは、時に取引先の方から「おたくの◯◯さんの対応がすごく丁寧だった」というように、社員を褒められたりすると、必ず皆の前で褒めるようにしていたそうです。部下への接し方でよく言われることですが「褒める時は皆の前で、叱る時は1対1で」というのを、本当に意識して実践していたそうです(ちなみに、誰にでも起こり得る小さなミスは、注意喚起のために皆の前で話すそう)。
他にも、ここではちょっと紹介しきれないような素晴らしい話も多数ありました。経営者としての度胸はもちろんですが、改めて、事業を成功に導くリーダーというのはコミュニケーション、つまり「人間関係の技術」に長けているのだなぁと感じた次第です。社員との接し方が、組織の成長、活性化に少なからず影響を与えている…まだまだ未熟な私にとっては、身が引き締まる思いでした。
「人間関係の技術」が事業を成功に導く
さて、いかがでしたか?人を増やしたり、新規事業を始めたり…というのは、すぐにはできないかもしれません。しかし、最後の「人間関係の技術」を磨くことは、今すぐにでも始めることができるのではないでしょうか。そしてこの技術は一時的なものではなく、未来永劫ずっとリーダーであるあなたを助けてくれる技術です。私もまだまだ未熟なことばかりですが、ぜひあなたと一緒に学んでいければ嬉しいです。
PS
これができているかどうかで明暗が分かれると思います。たとえばこんな風に↓