反論に対して素人がやること

From 安永周平

ちょっと想像してみてください。ある営業マンが今、最新のサービスを売ろうとしています。そのサービスを購入したら、彼の見込み客はそのサービスを使って素晴らしい商品開発ができるようになります。しかし、目の前にいる見込み客がこんな風に言いました。

「あなたのサービスはちょっと高いかな、と思いまして。その価格だと手が出せません。」

そこで、彼はこう答えます。

「いえいえ、実際のところ全然高くないんですよ。このサービスで御社が得られるものを考えてみてください。仕事の効率が今よりグンと上がりますし、半年もすれば元がとれるんです。その後はすべてプラスになるんですから。」

相手の反論に論理的に対応すると…

さて、こうした反論は営業でありがちです。しかしボブ曰く、これはダメな例です。なぜなら、この営業マンは商品を売ることばかり考えており、相手のことを考えていません。相手の「気持ち」を汲み取ろうとしていないんです。このように反論に対して論理的に相手を説き伏せようとしても、成約に結びつく可能性は低いでしょう。

確かに、この営業マンが言っているのは事実かもしれません。しかし、こんな言い方をすれば相手の自尊心を傷つけてしまいます。すると相手は、自分を傷付けた目の前の営業マンの言うことが信頼できなくなってしまうのです。何より、この営業マンは「値段が高い」という相手の反論を言葉通りに鵜呑みにして、買わない本当の理由が別にあることに気付いていません。

あなたなら、どのように対応する?

ではここで、別の対応を見ていきましょう。相手のことを気遣いながら、反論された内容の根っこにある”本当の問題”を探ろうとしたパターンです。今度は、あなたが実際にこの営業マンになりきってみてください。相手の反論はさっきと同じです。見込み客からこんな反論が出てきます。

「あなたのサービスはちょっと高いかな、と思いまして。その価格だと手が出せません。」

ここであなたは次のように答えます。

「80万円という価格は、このサービスを買うには少し金額が大きいと感じる、ということでしょうか?」

そうです、と相手は答えるでしょう。そこであなたは、次のように言うのです。

「確かにそうかもしれません。では、この金額に見合うだけの価値があるとすれば、どのようなことを期待されますか?」

そう、これです。すばらしい対応です。今、何が起こっているかを確認してみましょう。ポイントは3つです。

ポイント1:反論に対して反論で返さない

まず、反論に対して反論で返していません。そうではなく、親切心で相手を助けたいという気持ちで対応しています。そして、相手の言ったことを否定せずに、事実を確認するように質問したことで、相手は「自分が間違っている」という気持ちにならずに済んだのです。

ポイント2:相手に共感している

次に、相手の懸念をそのまま言葉にして、断定的でもなく、ただ優しく理解するように返しています。これにより相手は、「自分の気持ちを分かってくれた」と思うでしょう。少なくとも、自分のことを理解しようとしてくれていることが相手に伝わるでしょう。

ポイント3:相手と対立していない

そして3つ目のよい点は、相手の言っていることを確認する時に、相手と口論するつもりがない姿勢を示したことです。相手の間違いを証明したいわけでもなく、相手の反論によって困惑したということでもありませんでした。こうした心持ちでいられたからこそ「確かにそうかもしれません」という言い方ができますし、そのことで相手の意見をいったん承認することができるのです。

この「確かにそうかもしれません」という言葉は、あなたが相手のことを本当に気遣っていることがしっかりと伝わります。表面的ではなく、相手の立場に立って、問題について一緒に考えていることが伝わるのです。しかも、相手に「共感」はしていますが「同意」しているわけではありません。このような対応をすることで、相手は次のように口にするかもしれません。

「たとえば、このサービスで生産性が高まるとしても、バグが出る可能性がありますよね。そうなると、サービススタッフがすぐに対応してくれないと仕事が止まってしまいます。数時間程度なら問題ありませんが、1日とか2日も直らないとなると大きな損害が出ます。実際、購入後のアフターサービスがどの程度のものかというのは、皆が不安に思うのではないかと。」

「価格が高い」という言葉の裏側

これで、相手があなたのサービスを契約しない本当の理由が明らかになりました。そして、その懸念は妥当なものでしょう。いざそのサービスを契約して、もしトラブルで使えなくなったら、会社はどうなってしまうのか。すぐにバグが直らなかったら、どのくらい作業がストップしてしまうのか。会社として多大な損害を出しかねません。相手の責任の重さを考えると、躊躇してしまうのも当然でしょう。

これが、最初の例のように、相手に反論に対して反論で応戦してしまうと…相手が本音を話してくれる可能性は下がります。ボブがよく言うことですが、商品を買うかどうかを決めるのは”相手”です。僕らができることは、相手の立場になって、相手と一緒になって考え、問題解決のサポートをすることです。その際、相手に対してどれだけ共感できるかというのは、僕らが思っている以上に大きなポイントになります。ちょっとしたことですが、今日から変えていけることでもありますので、ぜひ取り入れてみてくださいね。

PS
営業に限らず人の心を動かそうとする時は同じロジックです。相手が求めているのは反論ではなく、これですよ…↓

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この記事の執筆者

1982年生まれ。福岡県出身。九州大学工学部卒(修士)。『THE GO-GIVER』日本公式サイトの運営責任者。

トヨタ自動車で4年間、生産技術のエンジニアとして勤めた後、ダイレクト出版へ入社してセールス&マーケティングの仕事に従事。3ヶ月後、グループ会社である経営科学出版の事業を任される。年商2億ほどで赤字だった事業部を1年で黒字化。1枚のセールスレターで2万人超の新規顧客を獲得した実績もあり、マネージャーとして事業部の年商7億円突破に貢献。

5年目に独立し、福岡で寿コミュニケーションズ株式会社を設立。現在、建設業を含む2社の経営に携わり営業チームの強化に当たる。ボブ・バーグの日本における独占ライセンシーとなり、当サイト『THE GO-GIVER』を通じて、営業、士業、中小零細企業の社長に役立つ教育事業を展開中。福岡在住。