実務よりも大事な委員長の行動

From 安永周平

第2次世界大戦後の話ですが、アメリカで新たに原子力委員会が設置され、デイビッド・リリエンザルという方が委員長に任命されました。彼は委員会のメンバーに、大きな社会的影響力があり、自分の考えに執着するような有名人ばかりを集めました。

この委員会は大変な責任と仕事を課せられ、メンバーは皆、1日も早く仕事に取り掛かりたいと言いました。メディアも大きな期待を寄せて、それが大きな圧力になっていました。我が強い人ばかりで意見の相違が多く、プレッシャーも大きい…普通に考えると、色々と問題が起こりそうですよね。ところが…

委員長が最初に取り組んだのは…

リーダーであるリリエンザル氏は、期待やプレッシャーも大きな状況下で、意外なことを始めました。最初から実務に取り組ませるのではなく、各メンバーの信頼残高の形成に数週間もの時間を費やすことにしたのです。

各メンバーがお互いのことをよく知り合うように、それぞれの興味、関心、希望、目標、背景、考え方、信念・価値観などを理解し合う機会を設けました。絆を深めていったわけです。こうしたことに時間をかけるのは、当時はとても”効率的”だとは見なされずに、大きな批判の的になりました。しかし…

口撃や自己防衛のない組織に

結果として、そのグループのメンバーは深い人間関係を形成し、オープンに話し合い、非常にクリエイティブで、お互いに相乗効果を発揮しながら仕事を進めることができました。メンバーはお互いを深く尊敬するようになったため、意見の相違が発生した時も、相手を口撃したり自己防衛したりするより、むしろ相手の意見を理解しようと努めました。

メンバーたちは「あなたほどの能力と知力に優れた人が賛成しないのだから、私にまだ理解できていない点があるに違いない。それを理解しなければならない。あなたには私にない視点がある。ぜひ、それを見つめるようにしたい」といった態度をお互いに取るようになったのです。そこには、自己防衛など必要なく、素晴らしい組織の文化が誕生していました。

「相乗効果」は現実的か?

さて、ビジネスではよく「相乗効果があるのではないか?」とか「Win-Winの関係」といった言葉が使われますよね。こうした言葉を聞いた時、ともすれば僕らも、それって本当に現実的な話なのか?と疑ってしまうこともあります。自分も勝って相手も勝つ…そんな都合のいい方法があるのかと。単なるキレイごとじゃないかと。

ただ、個人的に「できる、できない」はさておき、それを目指す(探す)ことを諦めてはいけないと思うのです。先の例にもあるように、相乗効果を心を湧き立たせ、エネルギーを倍増させ、クリエイティブな仕事につながります。オープンな態度でコミュニケーションをすれば、驚くような結果が出ることも少なくありません。

信頼&協力を生み出す3つのレベル

冒頭の話は、名著『7つの習慣』でも紹介されていますが、その中で、メンバー同士の信頼と協力を生み出すコミュニケーションには3つのレベルがあると言われています。そして、このレベルが高くなるほど、相乗効果(Win-Win)は生まれやすくなります。ですから、現実的だと思えない場合は、まずこの3つのレベルを認識するといいのではないでしょうか。

レベル1:防衛的(Win-Lose / Lose-Win)

防衛的なコミュニケーションは、信頼のない状態で生まれます。自分の立場を守ることを重視し、場合によっては契約書のような堅苦しい言葉を使い、あらゆる状況を前もって想定し、問題が起きた時の対応策を全て明確にして逃げ道を確保しておこうとするものです。

こうしたコミュニケーションは、自分が勝って相手が負ける「Win-Lose」や、自分が負けて相手が勝つ「Lose-Win」の結果しか生み出しません。どちらか一方が必ず負ける、損をする、苦痛を感じるのです。これは効果的ではありませんし「自分を守らなければならない」という自己防衛・保身の空気感を生み出し、悪循環に陥ります。

レベル2:尊敬的(妥協)

防衛的から一歩進んだのが、尊敬的なコミュニケーションです。これは、ある程度成熟した人が普段の中でやっているものです。お互いに対する尊敬はありますが、難しい衝突は避けたい関係です。そのため、丁寧に話し合いはするものの、感情移入はしません。お互い、論理的な理解はしても、相手の感情、価値観、信念体系などに深入りすることはなく、そこに新たな可能性を見つけることもありません。

このレベルでも、ある程度はやっていけます。しかし、相乗効果を生み出すWin-Winの関係を実現することはできません。多くの人が、この尊敬的な「妥協」という道を選んでしまいます。ただし、妥協では「1+1=1.5」にしかなりません。双方が譲り合ってしまうことになるからです。誠意と正直さで成り立つものですが、創造的・相乗効果的だとは言えません。

レベル3:相乗効果的(Win-Win)

そして、冒頭の話のように、相手の興味、関心、希望、目標、背景、考え方、信念・価値観などを理解し合った上で成り立つのが相乗効果的なコミュニケーションです。これは「1+1=8」のようになり、場合によっては「1+1=16」「1+1=1600」

なんてことも起こります。高い信頼に基づいて相乗効果が発揮されれば、最初の提案よりも優れた案が生まれ、全てのメンバーがその案に対してコミットすることができます。

そのうえ、クリエイティブな活動に参加することを心から楽しむことになります。そのプロセスから、少なくとも1つの組織文化が形成されます。そのプロジェクトが短期で終わるものであっても、そこには心を満足させる文化があります。最終的に相乗効果を達成することができなくても、メンバーで協力して相乗効果を求める姿勢が”より効果的な妥協点”を見出すでしょう。

諦めない姿勢に価値がある

こう考えると、相乗効果を目指すコミュニケーションは、そのこと自体に価値があると思うのです。たとえ「妥協」という結果になったとしても、それはレベル2の尊敬的なコミュニケーションよりも優れた案である可能性が高いですし、そこに生まれた文化自体に大きな価値がある…と僕は思うのですが、さてあなたはどう思いますか?

PS
人を動かそうとするよりも、人が自然と動いてくれるような対応が大切ですね↓

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この記事の執筆者

寿コミュニケーションズ株式会社代表取締役/寿防災工業株式会社取締役。読者1万人超の当メルマガ『THE GO-GIVER』発行人であり、福岡で40年続く社員52名の防災設備会社 二代目。1982年生まれ。福岡県出身。筑紫丘高校→九州大学工学部卒(修士)

新卒でトヨタ自動車に入りマークXやクラウンのモデルチェンジ、バンパー塗装工場の新設を担当。4年目で退職し半年のニートを経て教育ベンチャーのダイレクト出版へ転職。1通のセールスコピーで累計2万人超の新規顧客を獲得したマーケティング経験は宝。マネージャーとなりメンバーから総スカン喰らった経験も宝。事業部が年商7億となった5年目、独立して寿コミュニケーションズを創業。

WEBメディア事業のお客様からの依頼でDMサポート事業を始めたら、紹介だけで受け切れないほど仕事依頼があり、現在は新規クライアント受付停止中。BtoB無形商材に特化したDM戦略&戦術が強い。本業は「人の命と建物を火災から守り地域の街づくりに貢献する」防災設備会社で事業承継を前提に組織改善と採用に奮闘中。