対立する両者、想いは同じ?

From 安永周平

こんな話があります。あるメーカーで、かれこれ半年もの間ストが続いていました。組合側はしぶしぶ業務の再開に応じたものの、組合員たちは最初に要求した内容よりも不利な契約を呑まされてしまいました。仕事に復帰した最初の日、彼らの足取りは重く笑顔もありません。みんなひどく怒っていました。こんな状態でやっていけるとは思えませんでした。

ある経営コンサルタントのアイデア

ストが終結しても会社と組合の対立が続いていることを心配した経営陣の1人が、ある経営コンサルタントに助けを求めてきました。彼は組合側と経営陣それぞれのリーダーを集め、彼らを別々の部屋に分けました。そして双方に、会社のあるべき将来像を模造紙に書き出してもらった。

その作業は2時間に渡って続けられ、やがて模造紙は壁に張り出されました。作業が終了したところで、互いに相手と部屋を入れ替わり、どんなものでもいいから共通点を見つけるようにと指示された。

誰もが驚き、感動した理由…

まもなく両方のグループが研修室に戻ってきました。皆驚き、感動していました。リストに書き出された将来像はまったく同じだったのです。どちらも収益性が高く、地元に貢献できる企業になることを理想としていました。相手に揚げ足を取られる心配はいったん忘れて自由に話し合いをするように指示されると、全員が自分の想いを語り出しました。

この経験は、どれほど相手を色眼鏡で見てきたかを真剣に反省するきっかけとなりました。双方が相手への親近感を抱くようになっただけでなく、相手側の姑息な政治的策略が、実は自分たちの策略とそっくりであることにも気付き始めたのです。

自分と相手の「共通の目的」は何か?

相手の犯した「罪」が自分たちのものと違うのは、人格的な問題のせいでなく、相手が担う役割によるものだったと理解しました。こうして両者はお互いに敬意を持って対応できるようになり、経営陣と組合側の何十年も続いた冷戦が終わり、協力的な話し合いをスタートすることができたのです。

(※引用元『ダイアローグ・スマート』:幻冬舎ルネッサンス)

さて、いかがでしょうか?このように考えると、相手がどれほど自分と違っていても、共通の目的を見つけ出して、相互に敬意を示すことが可能であることもわかります。人は「自分は間違っていない」と思いたがる生き物ですが、そうしたエゴに流されることなく、相手の立場を理解することで物事が上手く運ぶことはたくさんあります。

「Win-Winの関係」なんて非現実的?

よく「Win-Winの関係」という言葉を耳にしますが、それは決して非現実的な話ではありません。どんな状況においても、その可能性を探ることが大切ではないでしょうか。それは何も、このような経営陣と労働組合の関係といった会社組織の話に限らず、日常の中でも相手と「Win-Winの関係」を築く機会はいくらでもあります。

同僚や上司との関係、夫婦や親子の関係、友達との関係…人生の様々な場面で、お互いの気分がよくなるように「交渉」する機会はたくさんあるんです。そしてこれは、営業・セールスにおいても大切なことではないでしょうか。

商談で絶対にしてはいけないこと

たとえば、商談で値引き交渉になったりすると、多くの人は「いかにして自分の取り分を増やすか?」ということばかりを考えてしまいがちです。そのために、巧みな話術を駆使して、値段を釣り上げようとしたり、あるいは買い叩いたりする人もいますし、時には相手を口撃したり脅したりする人だって少なくありません。

でも、こうした方法を続けている限り、目の前の見込み客や取引先といい関係を続けていくことはできないでしょう。当然ながら、知り合いを紹介をしてもらえることもありません。というのも、言ってみればこれは、相手を「心理操作」しようとしているようなものだからです。そして、心理学者のポール・スウェッツ博士はこう言います。

「心理操作は、相手への協力ではなく支配を目指している。これは、自分が勝って相手が負ける状況をつくり出す。なぜなら、相手の利益を全く考慮していないからだ。一方で、説得はそれと正反対である。心理操作をする人と違い、説得をする人は相手の自尊心を高めるように配慮するから、人々は喜んで動いてくれる」

言い換えると、「説得」が相手の役に立つことを目指しているのに対して、「心理操作」は相手を傷付けることを目指しているわけです。意図的にやっているかどうかは別にして、心理操作をする人が自分の利益だけにもとづいて行動しているのは確かでしょう。ですから、そのために相手が苦しむ羽目になっても気にしないんですね。

「説得は善、心理操作は悪である」

これは、実際にボブ・バーグが明言していることです。残念なことに、心理操作をする人は気付いていないんですが、これはビジネスに限らず、人生の習慣としてもよくありません。心理操作をする人は、部下を持っていてもチームを作ることができません。顧客を持っていても、いい関係を維持できないし、知り合いを紹介してもらえることもありません。

セールスにおける普遍の法則を思い出してください。「他の条件が全て同じなら、人は知っていて、気に入っていて、信頼している人に仕事や紹介を回す」のです。心理操作をしていることがバレたら、顧客はあなたに不信感を抱き、すぐにでも去っていくでしょう。それから、家族や友人を持っていても、幸せで充実感に満ちた関係を築くことができません。結果として、いずれ疑念と反感に満ちた関係に陥ってしまいます。

相手の気分をよくすること

商談においても、日常の様々なコミュニケーションにおいても…私たちが「Win-Winの関係」を築くために必要なのは、まずは相手の気分をよくすることではないでしょうか。そのために、相手をリスペクトし、敬意を示すこと。それを実際の「行動」で示し続ければ、セールスはもちろん人生において、あらゆる問題を解決することに繋がっていくはずです。

PS
営業先でこんな対応をしていると、問題は大きくなるばかりでしょう…↓

この記事の執筆者

寿コミュニケーションズ株式会社代表取締役/寿防災工業株式会社代表取締役社長。読者1万人超の当メルマガ『THE GO-GIVER』発行人であり、福岡で42年続く社員53名の防災設備会社 二代目。1982年生まれ。福岡県出身。筑紫丘高校→九州大学工学部卒(修士)

新卒でトヨタ自動車に入りマークXやクラウンのモデルチェンジ、バンパー塗装工場の新設を担当。4年目で退職し半年のニートを経て教育ベンチャーのダイレクト出版へ転職。1通のセールスコピーで累計2万人超の新規顧客を獲得したマーケティング経験は宝。マネージャーとなりメンバーから総スカン喰らった経験も宝。事業部が年商7億となった5年目、独立して寿コミュニケーションズを創業。

WEBメディア事業のお客様からの依頼でDMサポート事業を始めたら、紹介だけで受け切れないほど仕事依頼があり、現在は新規クライアント受付停止中。BtoB無形商材に特化したDM戦略&戦術が強い。「人の命と建物を火災から守り地域の街づくりに貢献する」寿防災工業株式会社で2022年11月1日、代表取締役社長に就任。