「受け取る」と絆が生まれる?

FROM ボブ・バーグ

“説得”とはどういうことだろう。相手を説得すること。相手を操作すること。その違いはどこにあるのだろうか。説得によって相手の意思を変え、何らかの行動を起こさせるのは、心理操作しているのとは違うのか。そのような疑問はとても興味深いものだ。

説得と心理操作の違いとは?

結論から言えば、説得と心理操作は違う。ご存知のように、人生においてほかの人から影響を受け、元々の自分の意思が変わるのはよくあることだ。説得とはあくまでそうしたことの一環であり、関わる人たち全員にとってよいことが起こるようにすること、と定義できるだろう。

一方、そうした中で誰かひとりだけが得をするような状況であったり、あるいは誰かに不利益をもたらすようなことがあれば、それは説得ではなく心理操作だと言えるだろう。心理操作とは、常にネガティブなものだ。精神的にも物理的にも何らかの強制力がそこに働いているのが特徴であると言える。

このように心理操作と説得の本質的な違いは、行為者がどういう意図を持っているかにある。説得しようとしている人も心理操作しようとしている人も人間の本質をよく理解し、何が相手にとって動機づけになるのかを熟知している。とはいえ、繰り返しになるが、説得する人とはそれに関わるすべての人間がプラスの結果になるように考えを巡らせることができるものだ。

「与えられる」ことが信頼を築く?

これはどのような文脈にあっても共通だ。たとえば誰かと知り合いになり、友好や信頼関係を深めたい考えるときにも当てはまる。そういったときに、説得が上手な人がとるアプローチは、多くの人が考える「友人になる方法」とは異なるアプローチである場合もある。

たとえば、世間にはこんな考え方がある。「まず、自分が相手に何かをしてあげることで、こちらをよく思っていない人でもその考えを改めてくれるものだ」、という考え方だ。これはもっともな部分もあるが、常に正しいとは限らない。事実、米国偉人であるベンジャミン・フランクリンは、この考え方とはまったく逆のアプローチで成功した。

ベンジャミン・フランクリンが敵を味方にした方法

彼の自伝に、ペンシルベニア州の議会でのあるエピソードがある。彼はある優秀な議員の男性とどうしても馬が合わず、熟慮の結果、彼は後々に備えてこの人物と”敵”ではなく”友人”として付き合うことを選んだと明かしている。そして、彼はこんなふうにアプローチした。

あるとき、彼はその苦手としているその議員の書斎におもしろい本があることを聞いた。それから彼に、その本を読ませて欲しいと手紙を書いた。そして、本を借り、読み終わって数日後にそれを返却するときには、メッセージも一緒に渡した。感謝の気持ち、それからを「次に君が困ったらことがあればぜひ自分を頼ってほしい」という内容も添えて。

すると実際、2人が会ったとき、なんとその議員のほうからベンジャミンに対して好意的に話しかけたそうだ。その後もその議員は丁寧に接してくれ、のちに助けてくれる存在になった。なんと、この2人の交友関係は死ぬまで続いたそうだ。

「与える」アプローチと「受け取る」アプローチ

さて、このエピソードから、だれかと「友人になる」には、必ずしもこちらから何かしてあげるだけが最善の方法でないことがわかる。こちらからまず相手に何かを頼み、一度こちらに対して親切な行動をとってもらう。また、相手にとっても何も理由がないのに親切な行動をとるよりも、頼みごとをされたほうが、親切を行動に移しやすい。

先に自分が与える側になるか、それとも与えられる側になるか。状況に応じてどちらの方法も有効だ。そのシチュエーションに合わせてどちらの手法がより効果的なのかを考え、選択していこう。

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この記事の執筆者

アメリカでは伝説的な元トップ営業マンであり、対人関係・影響力の行使に関する第一人者。「21世紀のデール・カーネギー」の異名を持つ。

現在は経営コンサルタント・講演家としても人気を博し、元大統領や著名な政治家からも助言を求められる。2014年には米国経営協会(AMA)からビジネス界のリーダー上位30人の1人に選出されている。

主なクライアントはゼネラル・エレクトリック(GE)、リッツ・カールトン、レクサス、アフラック、MDRT、全米不動産協会等。フォーチュン500社に名を連ねる大企業からも絶大な支持を受ける。

著書はこれまで世界21カ国語に翻訳され、累計発行部数は100万部を超えている。累計20万部の『Endless Refferals』や世界的ベストセラーとなった『THE GO GIVER』などは全米の企業で多く研修マニュアルとして使われている。フロリダ在住。