博物館に学ぶ法人営業の心得

From 安永周平

もう数年前のことだが「門司港レトロ」に行った時のことだ。門司港レトロとは、福岡県北九州市門司区にある観光スポットのことで、JR門司港駅周辺地域に残る外国貿易で栄えた時代の建造物を中心に、ホテル・商業施設などが大正レトロ調に整備されている。Wikipediaによれば、国土交通省の「都市景観100選」を受賞しているらしい。その歴史ある古きよき街並みは、デジタル化が目覚ましい現代社会において、何だか人の暖かさを感じさせてくれた。

休日でたくさんの人で賑わっており、当時はまだアジアからの観光客もとても多かった。「門司港レトロぐるめ博」なるイベントをやっていて、色んな屋台が出ており、まさにお祭り状態だった。そういえば、アインシュタインが宿泊した「アインシュタインメモリアルルーム」なんてのもあった。宿泊しただけで記念館が立つ…偉人の力は凄いのだなと改めて思う。

ところで、門司港レトロもよかったのだが、個人的にはその道中で立ち寄った「TOTOミュージアム」に心を奪われてしまっていた。私は元々理系の工学部出身で、大学院では材料物性工学を専攻していた。それに、前々職では自動車メーカーで塗装のエンジニアをやっていたのもあり、もともと「物質」や「素材」が好きだ。だから、陶器やセラミックスの素材が展示してあるTOTOミュージアムはとても面白かった(※なぜか文系出身の妻もこうした工業系の観光地が好き)。

「入場料が無料」のミュージアム

このミュージアム、白を基調としたモダンなデザインで、すごくオシャレな建物だし、博物館として十分に楽しめるのだけど…なんと無料である。企業のPRを兼ねているわけだから当然かもしれない。でも、ここには私たちが学ぶべきポイントがたくさんある気がする。無料でお客様に楽しんでもらう…これは、何か仕事に応用できるのではないだろうか。

もちろん便器を無料でもらったわけではないが(もらっても困る)、博物館としての体験価値は「本当に入場料取らなくていいの?」と思うほど高かった。まさに無料で何かを与えてもらった感覚である。改めて、お客様に価値を提供するのはモノだけではないなと思う。そして、こうした体験をすると、後々ミエナイチカラがはたらき出す。

たとえば、もし今後私が家を買ったりトイレをリフォームをしたりすることがあれば、ミュージアムで素晴らしい体験価値をさせてくれたTOTOの便器を選ぶだろう。他のメーカーの便器が多少安かったとしても、よほどの差でなければ意思を変えないと思う。なぜなら人は、知っていて、気に入っていて、信頼している人(会社)からモノを買うからだ。また、きっと知り合いにもTOTOを薦めるだろう。

なんて素晴らしいマーケティングなんだ!

そして私と同じように、他のお客さんも知人にTOTOを薦めたり口コミを起こしてくれたりすると思う。つまり、たくさんのお客さんが「広告塔」になってくれるわけだ。会社にとってこんなに都合のいい話はない。そういえば関西にいた頃、山崎蒸留所の工場見学に行った時もそうだった。製造工程を見学した後、高価な『山崎25年』のテイスティングで酔いが回っていい気分だった。工場見学ですっかり山崎のファンになっていた私は、お土産売り場でまんまとウイスキーを買っていた(笑)

TOTOに話を戻すと…もっと凄いことがあった。それは、100年以上前の1918年に『衛生陶器とは何か?』という小冊子を作り、それを無料で配って啓蒙活動(マーケティング)をしていたことだ。当時、和式便所が主流で「トイレ=不潔な場所」と考えていた日本人は、今のような洋式便器の必要性を感じていなかった。そんな時代に、初代社長である大倉和親氏は「これからの時代は、腰掛け式の便器によって、トイレが清潔で衛生的な場所になるのだ」と伝えていたのだ。この「無料で価値を与える」という今なお効果的な方法を、100年以上前にやっていたことにちょっと感動してしまった。

「人は、常に貸し方に立つべし。」

そしてこれは、ミュージアムの別の部屋に書かれていた名言の1つだ。創業当初からの歴代経営者のギャラリーがあって、そこには彼らが残したいくつかの名言が書かれていたのだ。森村組(TOTOの前身となる会社)の初代代表、森村市左衛門氏の言葉…とてもよい言葉だと思う。

人は、人に対して会社に対して、常に貸し方に立っていなければならない。自分が受ける以上のものを貸しておく。それも「天に貸す。」という思いで働いていれば、いつかはきっと報われる。

この「貸す」とは「与える」という意味で捉えることができるだろう。これはまさに『与える人が与えられる』というコンセプトそのものに思えた。貸すこと、与えることによって会社は繁栄するし、社長も営業マンも業績を伸ばしていくことができるのではないだろうか。

私たちが与えられるものは何か?

同じように、規模は違えど私たちビジネスパーソンも商品・サービス以外に与えられるものがあるはずだ。生命保険の営業を例に取れば、2000年から14年連続でMDRT登録をして終身会員となったソニー生命の鎌田聖一郎さんは、保険以外のことでも無料で相談に乗るらしい。

たとえば、主婦のお客様だったら、話のネタが尽きがちなママ友の集まりに出向いて、子どもの習い事や学習塾、住宅ローンの話などを、お客様の友人が興味を持ちそうな話をしたりもするそうだ。実際、当日はママ友数人が集まって、世間一般の子どもの習い事や学習塾のこと、住宅ローンの講義などを聞けるので、参加した方に大変喜んでもらえるとのこと。お客様とお話する時は、保険とはまったく関係のない用件でも自分が会って、役に立てることはないかを考えるらしい。

そして、保険以外の用件でも会っている話がお客様の知り合いにも伝わると…何が起こるだろうか?その講義に参加したママ友たちが、保険を見直したいと考えた時…いったい誰に声がかかるだろうか?こうなると、紹介へのハードルは自然と下がり、紹介をもらえる数がどんどん増えるのも頷ける。

自ら行動して相手にとっての価値を生む

自ら行動して相手にとっての価値を生む。もっと言えば、その提供する価値で相手の期待を超える。それができれば、あなたのビジネスは今とは、ひと味もふた味も違ったものになるのではないだろうか。保険の話で言えば、これらの活動を法人向け…つまりは会社経営者に対して行うことができたら?成果はこれまでと全く次元が違うものになるはずだ。そんなことを考えると、ちょっとワクワクししてこないだろうか。

PS
法人向け(社長向け)に保険で価値を提供していきたいのなら、この本は間違いなく読んでおいた方がいい。私は保険を売ってるわけではないが、社長の立場でも自社株対策や事業承継を含めて非常に役立っている。これ読んでるだけで「コイツわかってるな」と思われる確率がかなり上がるんじゃないかな↓

 

この記事の執筆者

寿コミュニケーションズ株式会社代表取締役/寿防災工業株式会社代表取締役社長。読者1万人超の当メルマガ『THE GO-GIVER』発行人であり、福岡で42年続く社員53名の防災設備会社 二代目。1982年生まれ。福岡県出身。筑紫丘高校→九州大学工学部卒(修士)

新卒でトヨタ自動車に入りマークXやクラウンのモデルチェンジ、バンパー塗装工場の新設を担当。4年目で退職し半年のニートを経て教育ベンチャーのダイレクト出版へ転職。1通のセールスコピーで累計2万人超の新規顧客を獲得したマーケティング経験は宝。マネージャーとなりメンバーから総スカン喰らった経験も宝。事業部が年商7億となった5年目、独立して寿コミュニケーションズを創業。

WEBメディア事業のお客様からの依頼でDMサポート事業を始めたら、紹介だけで受け切れないほど仕事依頼があり、現在は新規クライアント受付停止中。BtoB無形商材に特化したDM戦略&戦術が強い。「人の命と建物を火災から守り地域の街づくりに貢献する」寿防災工業株式会社で2022年11月1日、代表取締役社長に就任。