対立を協力へと変える鍵

FROM ボブ・バーグ

他者に影響を与えるうえで、 適切な「フレーミング」を行うことは重要だ。この「フレーム」とは、 物事に対する考え方の”土台”、”枠組み”のことになる。この「フレーミング」を適切に行い、悪印象をリセットできれば、相手と自分の双方にとって効果的な解決を見出すことができる。

カフェで出会ったとある家族の話

これについて1つエピソードがある。それは私がカフェでコーヒーを飲みながら本を読んでいたときのこと。店内に2歳くらいの男の子がいた。ところが、彼は両親がいるテーブルに向かっていく途中、滑って転んでしまったのだ。ケガはないようだったが、男の子は自分に状況に驚いた様子だった。

そう、”何か”が起こるのが人生だ。 それをどう捉え、対処するかが違いになる。実際、その子は両親の反応を見て、この状況を判断しようとしていた。一方、私は子どもが転んだんだから、両親は気が動転するだろうと思っていた。しかし、彼らは落ち着いたままで、我が子に歩み寄り、笑みを浮かべてこう言った。

「最高だ!とっても演技だったよ!」すると、男の子は笑みを浮かべた。そう、この両親は「転倒」という出来事をダンスか何かの「演目」へと「フレーミング」したわけだ。これによって、子どもが状況に対応できるようになった。まさに、こうした「フレーミング」こそヒントがある。

対人関係でのフレーミングのヒント

たとえば、初対面の相手と「あなたとお会いできてとても嬉しい」と表裏のない笑顔で握手しながら伝えることもそうだ。あるいは、誰かが人の輪に入りたがっているときにボディランゲージで歓迎の意を伝えること。これもまた緊張を解き、「自分は歓迎されている」と感じてもらえるフレーミングだ。

あるいは、見込み客と話をする際。目の前の相手が乗り気でなければ、こんなセリフで「フレーミング」をリセットできるかもしれない。


「私は長い間この商品をおすすめしていますが、 実際のところあなたに合うかは正直わかりません。なぜなら、あなたのこと詳しく伺わないとわからないからです。ですから、お役に立てるかもしれませんし、 そうでないかもしれないことをご了承ください」

これは何かと対立しそうな買い手と売り手の関係を「一緒に問題解決 しようする仲間」として「フレーミング」している。こうすることで、悪い印象をリセットできる。

さて、こうした「フレーミング」について考えるとき私がいつも思い返すのは、5世紀に書かれたという兵法書『孫子』の作者である孫武の言葉になる。


「戦わずして敵を屈服させるのが最高の兵法である」

もちろん、この言葉にはいろんな意味がある。しかし、私の考える意味は(相手、自分、状況)を理解し、計画し、準備し、対処できれば、血を流すことなく、望ましい結果を手に入れられる。これこそが、究極の勝利だろう。それを念頭に置いて、私は影響力についてこう考える。

「対立する前に解決するのが最高の説得である」

適切なフレームを設定すること。それによって、不必要な争いを起こさないようにすることが、それが影響力の最高の形になる。相手を屈服させるのではなく、味方に変え、関係する全員に勝利させる。これこそが、究極の勝利であり、 「フレーミング」はそれを可能にするものだ。

-PR-
部下が自ら率先してくれる…そんなマネジャーになるためのヒントとは?

この記事の執筆者

アメリカでは伝説的な元トップ営業マンであり、対人関係・影響力の行使に関する第一人者。「21世紀のデール・カーネギー」の異名を持つ。

現在は経営コンサルタント・講演家としても人気を博し、元大統領や著名な政治家からも助言を求められる。2014年には米国経営協会(AMA)からビジネス界のリーダー上位30人の1人に選出されている。

主なクライアントはゼネラル・エレクトリック(GE)、リッツ・カールトン、レクサス、アフラック、MDRT、全米不動産協会等。フォーチュン500社に名を連ねる大企業からも絶大な支持を受ける。

著書はこれまで世界21カ国語に翻訳され、累計発行部数は100万部を超えている。累計20万部の『Endless Refferals』や世界的ベストセラーとなった『THE GO GIVER』などは全米の企業で多く研修マニュアルとして使われている。フロリダ在住。