超頑張っても成長しない理由

From 安永周平

もう10年近く前のことだ。あるクソ暑い8月の真夏日に「神戸24時間リレーマラソン」という大会に参加したことがある。運動不足を解消するために当時通っていたジムで、担当のトレーナーと話している際に、私が「元陸上部だった」と口を滑らせたのが失敗だった。その瞬間、彼の眼の色が変わり…

トレーナー「安永さん!リレーマラソン出ません???」

安永「え、リレーマラソン?(何そのキツそうな響き…)」

トレーナー「今度、ウチのジムでチーム作って出るんですよ。」

トレーナー「今、メンバーを募集してて…っていうか陸上部ですよね?

安永「いや、俺は短距離だったから、長距離はむしろ苦手…」

トレーナー「いやいやいやいや、全っ然大丈夫ッス!!!」

と、若い兄ちゃんの暑苦しい誘いを断りきれずに、リレーマラソンの詳細も聞かされぬまま、気が付いたら2ヶ月後に出場することになっていた。今考えてみたら、何を根拠に大丈夫と言っているのか1ミリも分からない超強引なセールスだったと思うが、何より問題だったのは、クロージング後に聞かされた、リレーマラソンの「前」にくっついている言葉だ。

“24時間”リレーマラソン

1周2kmを12人でリレーで回しながら「24時間延々と走る」っていう、まぁひとことで言えば”変態”が集うイベントである(※選手の皆さんすみません)。「ちょっと待て!」という話なのだが、時既に遅し。この悪どい取引には返金保証が付いていなかった。予定がないと言った手前、仕方なく腹をくくるわけだが…24時間なんて、コンビニ営業か「リゲイン」を飲んだ企業戦士にしか不可能なことだと思っていた。私にとっては未知の世界。そして、実際に当日に走ってみて、予感は確信に変わった。

というのも、1周目を走り終わり、他の11人が走っている約90分間を休んで、また自分の番が来て2周目を走り終わってゼーゼー言ってる時、ふとスタート地点に目をやれば、運営スタッフが…

「残り21時間」

という死刑宣告のような文字を書いたスケッチブックを掲げてるわけだ。「その情報要らねぇ!」「励みにならねぇ!、心折る効果しかねぇ!」という私の心の叫びをよそに、どっしりと構える運営スタッフ。先がどんなモンか想像もつかないので超気持ちが萎えたのを覚えている。

しかしまぁ、他のメンバーが走ってると自分だけリタイア…なんて気にはなれないのが人間だ。正直、練習不足は否めなかったのだが、人間って「やらなきゃいけない状況」になったら頑張れるものだ(※タイムのことはさておき)

昼の12時スタートで、翌日の12時に終了だったんだが、「残り3時間」とかなるとゴールが見えてくる。最後の方は、正午に向かって超暑くて眠くてキツかったけど、みんなヘロヘロになりながらも全員でゴールした。ゴールの後は…そりゃあ爽快だった。振り返れば24時間…苦しみを乗り越えて、もの凄い達成感を味わっていた。

「達成感」は気持ちがいい。しかし…

こうした苦しいことの後って、もの凄い達成感が得られる。そして「あぁ、自分は頑張った」とか「この経験が、いつかきっと役に立つ」なんて思ったりするものだ。言葉を変えれば、この経験、苦しみを乗り越えて自分が「成長した」と感じているのかもしれない。

実際、世間ではよく「苦しい時こそ、成長するチャンス」とか「本当の成長は、苦しみの先にある」といったようなことが言われる。それに、そうした話は毎晩のように、人生の先輩方が居酒屋で美談として語っているかもしれない。しかし、これって本当にそうだろうか?

苦しみを乗り越えても、人は成長しない?

少なくとも、先の24時間リレーマラソンでの苦しみは、私自身の成長には繋がらなかった。正直、タイムにさえこだわらなければ、あの環境…他の人が頑張って走ってる状況なら、たぶん誰でも、イヤでも最後まで走り切れると思う。つまり、たった1日腹をくくれば、この種の達成感というのは誰でも味わえる。しかし、そこに本当の意味での「成長」があるかというと疑問だ。

もちろん、優秀な人であれば、この経験に何かしら別の意味付けをして、それを次の行動へのモチベーションとして昇華させることで、自身の成長につなげるのかもしれない。しかし、その場合もリレーマラソンを走った行為自体が成長を生んだわけではないと思う。

エベレストに登頂した男性の深イイ言葉

以前、エベレスト登頂に成功した登山家が、インタビューでこんな事を聞かれたそうだ。「エベレストの頂上に立って、心は強くなりましたか?」と。そう聞かれた彼の答えはNOだった。しかし、彼が続けて答えたコメントが印象的だった。

「登頂した瞬間、気が抜けてしまいました。だが、登頂したとき、僕の心は確かに強くなっていました。登頂するためのプロセスの中で強くなったのです。」

彼はエベレストに登るために、何年にも及ぶ計画を立て、それに従って毎日を懸命に過ごしたのだ。そんな「毎日の努力の継続」が心を強くしたと言う。つまり、彼が強くなったのは「その登頂までのプロセス」の中であって、登頂した瞬間ではない

人は「目標へ到達するプロセス」の中で成長する

人は、何か大変な事をやり遂げた時に、大きく成長するのだと思いがちだ。達成感もあるから、そう思いたいのだろう。しかし、残念ながら真実はそうではない。人を成長させるのは、「自分にできる努力を日々どれだけ長く続けたか?」であり、その継続した長さに比例して、人は強くなり、成長する。

恥ずかしながら、私がリレーマラソンを走ったケースはそうではなかった。もし、目標タイムを決めて、毎日練習してきたのであれば話は別だったが、現実はヒドい練習不足のまま参加した。当日は確かに超頑張ったのだが、頑張ったのは「たった1日」だ。そして、翌日に残ったのは成長ではなく、激烈な「筋肉痛」だった。。。

誰しも一時的には頑張る。だからこそ…

一時的に頑張った経験なら、誰にだってある。だからこそ、それでは突出した成果など上げられない(だって、みんなやってるからね)。そして、他の人…その他大勢のライバルがやらないのは、目標を決めて、そのために必要な計画・行動を続けること。地味なことかもしれないが「継続は力なり」の力に勝るものはない。そして、ほとんどの人がやらないからこそ、圧倒的な成果につながるのはわかるだろう。

イチロー選手だって毎日素振りしてるんだから、私たち成長途中の人間が日々の努力を怠っていては目標が叶うべくもない。私も2ヶ月後に迫った福岡マラソンの練習ができていない、自分への戒めとして書いている。毎日ちょっとずつでもいいので、自分にとってプラスとなる行動を、ぜひ一緒に続けていこう。

PS
イエローハット創業者の鍵山さんが言う『凡事徹底』は本当にそのとおりだし、これを1日1話で続けられるコレはトイレに置いて毎朝読むのを続けるのはいいと思う↓

この記事の執筆者

寿コミュニケーションズ株式会社代表取締役/寿防災工業株式会社取締役。読者1万人超の当メルマガ『THE GO-GIVER』発行人であり、福岡で40年続く社員52名の防災設備会社 二代目。1982年生まれ。福岡県出身。筑紫丘高校→九州大学工学部卒(修士)

新卒でトヨタ自動車に入りマークXやクラウンのモデルチェンジ、バンパー塗装工場の新設を担当。4年目で退職し半年のニートを経て教育ベンチャーのダイレクト出版へ転職。1通のセールスコピーで累計2万人超の新規顧客を獲得したマーケティング経験は宝。マネージャーとなりメンバーから総スカン喰らった経験も宝。事業部が年商7億となった5年目、独立して寿コミュニケーションズを創業。

WEBメディア事業のお客様からの依頼でDMサポート事業を始めたら、紹介だけで受け切れないほど仕事依頼があり、現在は新規クライアント受付停止中。BtoB無形商材に特化したDM戦略&戦術が強い。本業は「人の命と建物を火災から守り地域の街づくりに貢献する」防災設備会社で事業承継を前提に組織改善と採用に奮闘中。