奴隷から偉人になった男の告白

FROM ボブ・バーグ

私が好きなアメリカンヒーローの逸話の中に、黒人奴隷でありながら偉大な教育者として大成したブッカー・T・ワシントンの話がある。ブッカー・ワシントンはラフナーという女性が自分の人生を変えてくれたとのちに語っている。そのラフナーとは当時彼の雇い主だった。

あるとき、雇い主であるラフナーは彼の仕事に対してある注文をつけた。それは「床を掃除するときは、一点の汚れもないようにいつも完璧にすること」というものだった。

ブッカーは当初この要求に辟易したが、後にその重要性を理解し、受け入れるようになった。そして、この「掃き掃除を完璧にする」ことが、のち彼の人生に大きく影響を与えることになる。

掃き掃除が人生を変えた?

幼いころのブッカーは、現在のハンプトン大学に籍を置くという夢を持っていた。そんな彼は、あてもお金もないまま長旅に出て、何とかハンプトン大学に辿り着く。しかし、受けられる席数はすでに満席になっており、彼は入学できないことを知らされる。

しかし、そこで彼はなんとそのハンプトン大学で臨時の仕事を得ることができた。それが「教室の掃除」だった。この掃除を一人で完璧にこなしたことから周囲がすっかり感心し、なんと彼は大学入学につながるチャンスを得ることができた。

その後、彼は25歳の若さで、アラバマ州のタスキーギに設立された職業訓練校の校長となった。そして、後年彼は、自分の成功の鍵が「掃き掃除を完璧にする」ことにあったと語っている。まさに、ラフナーの存在とその助言があってこそだ。

もしも彼女が完璧な掃き掃除を指導しなければ…言い換えれば、彼が与えられた仕事に対して最善を尽くす習慣をついていなかったら、ブッカーはその能力を認めてもらう機会すら得られなかっただろう。

小さな積み重ねを大切にしよう

実際、彼は職業訓練校で教鞭を執る職に就いてからも、このことを重要なメッセージとして何度も生徒たちに説くようになった。彼はこう語っている。

「人生の成功は大きなものではなく小さなものによって確立されます。遠くにある珍しいものではなく身近なありふれた日常にあるのです。」

「掃き掃除を丁寧に」。そう聞くと、とても些細なことに思えるかもしれない。しかし往々にして、大きな影響を与えるというのは小さなことから始まる。

来る日も来る日も、言い訳をせずに約束を果たす人。あるいはあらゆることにいつも最善を尽くす人。はたまた、価値あることをし続ける人は、相手の口座に信頼を「預け入れ」、やがて莫大な「利息」を受け取ることができる。

こと、ビジネスにおいては多くの顧客、クライアントの信頼を勝ち取ろうだろう。結果として、紹介や口コミによって、より多くの人々から知ってもらい、気に入ってもらい、信頼してもらえる。その好循環のサイクルに入ることができるだろう。

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この記事の執筆者

アメリカでは伝説的な元トップ営業マンであり、対人関係・影響力の行使に関する第一人者。「21世紀のデール・カーネギー」の異名を持つ。

現在は経営コンサルタント・講演家としても人気を博し、元大統領や著名な政治家からも助言を求められる。2014年には米国経営協会(AMA)からビジネス界のリーダー上位30人の1人に選出されている。

主なクライアントはゼネラル・エレクトリック(GE)、リッツ・カールトン、レクサス、アフラック、MDRT、全米不動産協会等。フォーチュン500社に名を連ねる大企業からも絶大な支持を受ける。

著書はこれまで世界21カ国語に翻訳され、累計発行部数は100万部を超えている。累計20万部の『Endless Refferals』や世界的ベストセラーとなった『THE GO GIVER』などは全米の企業で多く研修マニュアルとして使われている。フロリダ在住。