From 安永周平
以前、我が家でお掃除ロボット「ルンバ」を導入した時の話だ。何かのキッカケで妻に「掃除して」と言われたことにイラッとして、Amazonで衝動買いしてしまったのを覚えている。何がキッカケだったかは覚えていない。とにかく「コレで文句ねぇだろ」と言わんばかりだ(我ながら器が小さいw)まぁ夫婦の小競り合いなんてそんなものだ。ただ、妻が「旦那に掃除してと言って仕事に行ったら、次の日にルンバが届いた」と同僚に話すと鉄板でウケるらしい。ネタを1つ提供できて何よりである。
そんな流れで届いた日の夜、早速早速充電してスイッチを入れると思ったよりデカい電子音が鳴り響く。その後、ウィイイイン…という音とともに動き出した。流石はロボット、文句1つ言わずに部屋の中を動き回り勝手にゴミを掃除してくれる…なかなか可愛いヤツである。
人が購入を決める理由は何か?
ちなみに衝動買いとはいえ多少の機能は調べた。ルンバの公式サイトを見ると商品ラインナップは色々あった。当時、1番高性能なヤツは12万円くらいした。何がそんなに違うんだろうと思いながら、高いモデルの説明を読んでみると…
ルンバ900シリーズ iAdapt 2.0 ビジュアルローカリゼーション搭載。カメラとセンサーを駆使して、リビングから寝室まで家中の床を清掃する最高峰シリーズ(最新の最高位モデル)。
ルンバ800シリーズ AeroForce クリーニングシステム搭載。センサーが部屋の状況を把握してくまなく清掃。清掃力とお手入れのカンタンさを両立したハイエンドモデル(1つ前の上位モデル)。
要はセンサーが高性能・多機能であったり、清掃力(吸引力)の強さといった要素によって、価格帯が分かれているらしい。ただ、当時住んでいた家は基本フローリングで、カーペットも洗えるやつだし、深夜のテレビショッピングで「うわぁスゴい!」と外人が絶叫するような吸引力も必要ない。それに断捨離に励んでいることもあり、モノや障害物もそんなに多くなかった。
となると、通常のモデルで十分に目的を果たしてくれるだろう…そんな判断のもと、通常の1番ベーシックなルンバ600シリーズから、「ルンバ654」という機種を購入した(※Amazonで35,000円だったから、最上位モデルの4分の1くらいで済んだ)。結果、どうやら十分な感じだ。煩わしい掃除をしなくていいので、とても助かった。で、ここで改めて思ったことがある。
人が購入を決める理由は特徴ではない
そもそも、私が購入しようと思った理由はその商品の「特徴」を知ったからではない。ルンバの導入を検討したのは、掃除が面倒だからだ。こうしたセンサーの感度や吸引力の強さといった「特徴」に魅力を感じて購入したわけではない。だから、たとえばAmazonではなく電気屋の店員さんに、
「こちらの掃除機は、iAdapt 2.0 ビジュアルローカリゼーションが搭載されています。カメラとセンサーを駆使して、リビングから寝室まで家中の床を掃除できるんですよ!」
なんて営業トークをされても、ちっとも欲しくならなかっただろう。それよりも、ウチは共働きで2人とも家事は嫌いだ。だから、掃除に時間を取られたくなかった。となると、以前見かけたこの広告…
『それは、自由な時間をプレゼントするということでもある。』
こちらの方が、ずっと心に刺さるのはごく自然な話だ。実際、この広告はよくできている。注目すべきは、商品の特徴のことが書かれていないということ。書かれているのは、「自由な時間をプレゼントされる」という、メインターゲットとなる主婦にとって、とても大きな利点(ベネフィット)であるという点だ(なんせ世のお母様方は、年中休みなしの子育てや家事で日々メチャクチャ忙しい)。
営業が語るべきは利点(ベネフィット)である
これは、セールスに関わる仕事をしている私たちこそ、常に意識しておかなければならないことではないだろうか。商談で、見込み客の悩みを聴くこともなく、自社サービスの特徴・強みを延々とまくし立てるだけでは、見込み客にとってはウザったいだけだ。
もちろん、そうした営業マンは嫌われる。すると、ご存知のようにその人からは買わなくなる。なぜなら、人は知っていて、気に入っていて、信頼している人から物を買うし、紹介もする。セールスにおいて重要なのは、信頼関係を築いた上で、商品・サービスの特徴ではなく、相手が感じる利点(ベネフィット)を話すことだ。
もちろん、ラインナップが複数あれば、先の私の例のように最終的には特徴を見て「自分に合うもの」を探すだろう。でも、購入する意思はそれ以前に決まっていて、決めた理由は「面倒な掃除をしなくていい」という利点(ベネフィット)だ。ルンバを導入することで、煩わしい掃除から解放され、自由な時間が生まれる。だからこそ、価値を感じたわけだ。
特徴と利点の違いを知るのが第一歩
実際、ボブ・バーグが著書の中で「特徴と利点の違いは、簡単に言えば、特徴はそれが”何であるか?”であり、利点は”それが何をしてくれるか?”を表している」と言っている。別の言い方をすれば、特徴は機能。一方で利点は、問題の解決や願望の成就だ。そして、見込み客が知りたいのは圧倒的に後者である。
自社の商品・サービスが本当にいいものであれば、どうしても特徴を説明してしまいがちだ。しかし、見込み客が価値を感じるのは、その特徴そのものではない。その特徴によって得られる利点(ベネフィット)である。だからこそ、私たちは商品の特徴を利点に変換して伝えなければならない。商談では相手の悩みをしっかりと聴いた上で、あなたが扱う商品・サービスが「相手に何をしてやれるか?」について話すことだ。これを忘れないようにしたい。
PS
あなた自身が社長で、もうちょっとドロ臭いB2Bのフィールドセールスをしているなら…最近私が読んでいるこちらも参考にしてみてほしい。屁理屈なし、綺麗ごとなしでバリバリ実務に役立つセールスの話が満載だ↓