昔、キラキラ起業とか流行ったが…

From 安永周平

先日、ある方のSNS投稿を見た時にモヤモヤしたものを感じた。端的に言えば「あぁ、上手くいってないんだろうな」という気持ちだ。投稿を読むとマーケティングのプロとして独立してから色んな仕事をしているようだ。ただ…”凄そう”に書いてはいるものの内容が抽象的でよくわからない。SNSで集客したいのだろうけど、たぶんまともな単価の仕事は見込めないだろう。

マーケティングで独立する人の勘違い

マーケティングをかじった人がよく「モノはいいのに売れてない商品が世の中にはいくらでもある。だからマーケティング(コピーライティング)のスキルがあれば食いっぱぐれることはない」みたいなことを言っているが、実のところそんな”都合のいい商品”との出会いはレアだ(だから時々出会うと嬉しい)しかも、その商品のマーケティングを任されるために必要なのはマーケでもコピーでもなく「営業」だ。お客さんと面と向かって話さなければいけない。もちろん紹介も含めて。

「営業が嫌だからマーケティングしたい」と考える人は多いけど、これはそもそもズレている。相手の悩みや立場を理解するためにお客さんと話せない人はよいマーケターにはなれない。営業出身の人によいマーケターが多いのは偶然ではない。それなのに、SNSで投稿を色々とこねくり回して発信していれば自分のよさが伝わっていいお客さんがつく…と思っているのだろうか。残念ながらそれは幻想だ。

何よりその人の投稿を見ていれば、失礼ながらマーケティングのスキルが不十分なこともわかる。似たような境遇の人同士で仕事を融通したり無料コンサルを受け合ったりすることはあるかもしれないが、企業向けの高単価案件などは取れないだろう。そうした状況で食っていくのは大変厳しいものがある。凄いスピードで口座の貯金が溶けていくことに焦りながら、SNSでは「上手くいってる風」を演じ続けるのはツラい(私も似たような黒歴史がある)

「キラキラ起業」と揶揄された人たち…

以前、SNS界隈で「キラキラ起業」という言葉が流行ったことがある。これ、ある方の言葉を借りると「自分を飾り立て、仕事の実績や日常を粉飾し、充実ぶりをアピールしてキラキラしている風を装う。同類のキラキラ女子とお茶会だランチ会だと頻繁に集い、社交に勤しんでは、その様子をSNSで発信する。そして見た目の華やかさや賑やかさに引っかかって集まってきたカモたちに、価値と価格が見合わない商品やサービスを売りつける」というものだ。

さすがにこれは極端かもしれないが、SNS界隈だけで語られる起業にはこうした側面があるように思う。キラキラ起業に限らず「SNSマーケ」とか「認定◯◯」とか情報商材屋とかネットワークビジネス(マルチ商法)とかの類も同じだ。彼ら彼女らはよく起業家、成功、夢、自由、人生を変える…といった凄そうだけど抽象的で”意味を持たない言葉”を使う。つまり、フワフワしたワードばかりで具体性がない。こうした兆候が出始めたら黄色信号だ。

足りないのは技術・経験である

本当は本人も分かっているはずだ。”自分を嘘で塗り固めた投稿”をSNSで続けたところで、まともな仕事なんて取れないことを。そもそもお客さんではなく友人と繋がっているSNSで集客すること自体、マーケティングの戦略としてイケてない。友人はお客さんではない。セミナー参加者同士で繋がった人なんかもいるかもしれないが、その人達は無料や低単価など付き合い程度の仕事にしかならない。

そして、どんな講座に参加しても「経験」をショートカットすることはできない。だから、集客のためのSNS投稿なんかやってないで、実務経験を積むしかないのだ。経験を積んで自分の技術・技量が上がってきてお客さんの期待を超えることができれば、その時にお客さんに知り合いを紹介してほしいと頼めばいい。お客さんが満足してくれていれば「この人を誰かに紹介して自慢したい」と喜んで応じてくれる可能性は高い。

一方で実務から逃げて「◯◯養成講座」とかやり出したら危険だ。それこそ先のキラキラ起業と変わらない。本当に技術がある人は本業で忙しくて講座やってる暇はない。なんなら発信しなくても紹介で仕事が来る。ただ、最初は営業も頑張りながら実務経験を積んで、怒られながらでも成長していくしかない。勉強したら近道できることがゼロとは言わないが、そこに夢を見過ぎていると、ただの”イタい奴”になってしまう。

「GIVE」も言葉だけ鵜呑みにしない

ちなみに、営業を極めた人ほど「GIVEの精神が大切だ」と言う。これは本当にその通りだけど、成長には段階というものがある。最初は行動量に勝るものなし。このメルマガで言う「GO-GIVER」は行動力のあるGO-GETTER(やり手のビジネスパーソン)の上にしか成り立たない。成果を出せるようになって、次第に精神面も成長していく。最初からギブギブ言ってるだけでは数字が付いてこない。GIVEの大切さは、成果を出せるようになった時にはじめてハッとさせられて気気付く面も多い。

地道な経験を積むことから逃げないようにしよう。マーケティングでも営業でも、この点は変わらない。SNSの世界だけで”セルフブランディング”とか言って自分に嘘をついていても苦しいだけだ。むしろ苦しいなら誰かに助けを求める勇気を持った方がいい。自分を演出してる人よりも、素直に助けを求めてくる人の力になりたいと思うのが人間だから。

追伸:
今日の話は自戒もいいところで、過去には思い出すのも恥ずかしい半年間があった。実際に経験してみないと分からない面もあるんだけど…それでも早く気付くことで助かることもある。そんなわけで、マーケティングで独立したい人にこの1冊はオススメ。営業のリアルを知ることは独立後の自分を助けると思う↓

この記事の執筆者

寿コミュニケーションズ株式会社代表取締役/寿防災工業株式会社代表取締役社長。読者1万人超の当メルマガ『THE GO-GIVER』発行人であり、福岡で42年続く社員53名の防災設備会社 二代目。1982年生まれ。福岡県出身。筑紫丘高校→九州大学工学部卒(修士)

新卒でトヨタ自動車に入りマークXやクラウンのモデルチェンジ、バンパー塗装工場の新設を担当。4年目で退職し半年のニートを経て教育ベンチャーのダイレクト出版へ転職。1通のセールスコピーで累計2万人超の新規顧客を獲得したマーケティング経験は宝。マネージャーとなりメンバーから総スカン喰らった経験も宝。事業部が年商7億となった5年目、独立して寿コミュニケーションズを創業。

WEBメディア事業のお客様からの依頼でDMサポート事業を始めたら、紹介だけで受け切れないほど仕事依頼があり、現在は新規クライアント受付停止中。BtoB無形商材に特化したDM戦略&戦術が強い。「人の命と建物を火災から守り地域の街づくりに貢献する」寿防災工業株式会社で2022年11月1日、代表取締役社長に就任。