コピー機が売れない理由、わかる?

From 安永周平

あるコピー機の販売会社で、売上が横ばいになっており社長は悩んでいた。コピー機は売るのが難しいからか粗利率が高く、社長はもっと売上を伸ばしたいと思っていた。そこで経営コンサルタントに相談したところ「直近1年間の売上台数を調べ、新規客と買替客に分けてください」と依頼があった。その結果は…

新規客:買替客=50:50

まぁ実際にはそんなキレイな数字ではないが、新規と買替が約半々だった。これはいったい何を意味しているのだろうか?賢明なあなたならお察しかもしれないが「売上台数が横ばい」かつ「その半数が新規」であるなら、買替客の半数を逃してしまっていることになる。買替客をしっかりフォローできていれば、新規客の分だけ売上は伸びるはずだからだ。

なぜこうなってしまうのだろうか?端的にいえば、これは売り方が間違っているからだ。その間違いのもとは、お客様訪問にある。もっと言えば、お客様訪問の「目的」だ。

売るためにお客様を訪問していないか?

ほとんどの営業マンは「売るため」にお客様を訪問する。売ることを目的としているのだ。だからこそ「見込客」とか「訪問効率」といった売り込み感漂う言葉を使うようになる。そして、こうした言葉を使う人がどういう行動を取るかといえば「売れる見込みのないお客様は訪問しない」である。

つまりコピー機を買って2〜3年のお客様は売れる見込みがないので訪問しない。顧客リストを調べて5〜6年前に買ってくれたお客様を洗い出して「見込客」と思って訪問する。すると、前に買ってくれたお客様は退職したり、他部署に異動になっていたりする。

たまたまその部署に残って出世する人もいるが、そうした人は営業マンを見て「久しぶりだな、何しに来たんだ?」と突き放す。買ってほしい時には毎日のように来て売り込むくせに、いったん売れてしまうとパタリと来なくなる。そして、次の買い替えの時期が近づくと訪問…である。これではあまりにも露骨過ぎる。

「そろそろコピー機の買い替えの時期かと…」

久々に来たと思ったら売込みの話を持ってくる。お客様は「こいつからは買わん」と決意する。「こんな奴から買うよりも、最近熱心に来てくれる営業マンから買おう」と思うのだ。そして「もう買うところが決まってるよ。あんたは全然顔出さないからな」と切り捨てる。人間とはこういうものだ。

そして、これは訪問の目的が間違っていた結果として起こる現象だ。売ることだけに焦点を合わせ、お客様との人間関係を無視している。訪問をやめると、お客様との人間関係も同時に断たれてしまう。そして、人間関係のないところに営業は成立しない。電話一本かけずにいたのでは、人間関係が消えてしまって販売は成功しない。

社内の人間関係が大切なのはもちろんだが、お客様との人間関係の重要性を忘れてはいけない。それを確保し、維持するのが訪問なのだ。

「訪問の目的は顧客確保である」

これは伝説の経営コンサルタントと呼ばれた一倉定さんの言葉である。そして、この訪問は定期訪問でなければならない。なぜなら定期訪問は計画的であり、不定期だと「訪問できる日は訪問するが、できなければ訪問しなくてもいい」となってしまう。誰しも忙しく仕事をしているのに、時間ができたら…なんて言っていたら結果は見えている。

たとえば毎月1回お客様を訪問するとしよう。それを5年間続けて6年目の最初の月に受注できたなら訪問回数は60回だ。60回の訪問で1件受注。これは確率の問題だ。だから1日6社訪問すれば、10日で60回になって1台売れる計算になる。1日10社訪問したら6日で受注、あるいは1日3社であれば20日で受注…となる。

定期訪問を続けた先はどうなる?

つまり60回訪問とは6年先のことではなく、1日6社なら10日ごと。1日10社なら6日ごとに受注の可能性があるわけだ。とはいえ、現実は今週から訪問を始めても来週に受注できたりはしない。先の一倉定さんの見立てで言えば、効果が出るのはだいたい1年半だそうだ。

これはゼロから始めるには気の長い話だ。しかし、1年半全くゼロではないし、これを愚直に続ければ…1年半後あたりから急に受注が増え始める時が来る。社長だろうが営業だろうが、これをやって変化が起こり始めれば会社の士気は上がる。まさに突然変異のような状況だ。とはいえ、先の確率を考えれば、私たちにとっても現実的な話だと思わないだろうか?

“昭和感”漂えど行動の積み重ねは尊い

世の中には営業ノウハウが溢れている。私たちがこれまで提供してきた「紹介」による営業もその1つだ。ただ、短期的に見ればどんなに優れているノウハウも、定期訪問を続けた先にある目覚ましい成果には敵わないのではないだろうか。

「すぐに稼げる〜」みたいな情報が跋扈している昨今だが、昭和感漂うけど確実に成果に繋がる行動を大切にしていきたいと思う今日この頃だ。さて、あなたはどう感じただろうか? どう行動するかはあなたの自由だが、とにかく今週も頑張っていこう。

追伸:
定期訪問を続けられる自信がない?だったら、まずは安永と同じくこっちの方から始めるのがいいかもしれない↓

この記事の執筆者

寿コミュニケーションズ株式会社代表取締役/寿防災工業株式会社代表取締役社長。読者1万人超の当メルマガ『THE GO-GIVER』発行人であり、福岡で42年続く社員53名の防災設備会社 二代目。1982年生まれ。福岡県出身。筑紫丘高校→九州大学工学部卒(修士)

新卒でトヨタ自動車に入りマークXやクラウンのモデルチェンジ、バンパー塗装工場の新設を担当。4年目で退職し半年のニートを経て教育ベンチャーのダイレクト出版へ転職。1通のセールスコピーで累計2万人超の新規顧客を獲得したマーケティング経験は宝。マネージャーとなりメンバーから総スカン喰らった経験も宝。事業部が年商7億となった5年目、独立して寿コミュニケーションズを創業。

WEBメディア事業のお客様からの依頼でDMサポート事業を始めたら、紹介だけで受け切れないほど仕事依頼があり、現在は新規クライアント受付停止中。BtoB無形商材に特化したDM戦略&戦術が強い。「人の命と建物を火災から守り地域の街づくりに貢献する」寿防災工業株式会社で2022年11月1日、代表取締役社長に就任。