絆を強固にする対人関係の魔法

FROM ボブ・バーグ

相手の変化や違い、成長や成果にいち早く気づくこと。それを言語化し、はっきりと伝えること。周知の通り、こうした行為は「承認」と呼ばれ、価値あることだ。

「承認」がもたらす力

さて、この話に関連して1つ紹介したい本がある。マイク・マグラスリンの『Free Throws(フリースローズ)』だ。この本のタイトルがどうして「フリースロー」とバスケットボールの用語になっているのかは、本の序盤で説明されている。

1980年代後半、まだ学生だった著者はインディアナ大学でバスケットボール界の伝説的な指導者であるボビー・ナイトが所属するバスケットボールチームのマネージャーを務めていた。

著者はそのボビー・ナイトからも多くのことを学んだと語っているが、もう1人の人物との関わりにも多くの学びを得た。それは、名将として知られた指導者、マイク・シャシェフスキーだった。

1980年代のボビー・ナイトはオリンピックチームの指導を行っていた。そんな中、アシスタントコーチとしてこのマイク・シャシェフスキーを起用したのだった。とはいえ、マイク・シャシェフスキーもまたその当時から大物指導者だった。

著者に影響を与えた大物指導者の振る舞い

そして、そんな大物の送迎を任せられたのがこの本の著者だった。道中、シャシェフスキーは当時学生だった著者に「学業とマネージャー業の両立はどうだい?」とか「どうしてチームのマネージャーになったんだ?」を尋ねたという。

大物コーチである彼が一介の学生にこんな話題をふってくれること自体、学ぶところがある話だ。とはいえ、このとき著者は緊張して「ええと、3日後に大きな試験があって…」なんてふうに答えたそうだ。

その3日後。著者はまた偶然マイク・シャシェフスキーと顔を合わせる機会があった。すると、彼はなんと自分の名前を覚えてくれており「試験はどうだった? 自信のほどは?」なんて尋ねてくれた。

おそらく、そんな大物が車での会話まで覚えていたなんてとても感動したことだろう。それから著者は、人とのちょっとした会話の内容を覚えることを意識しはじめたと本の中で述べている。

人間関係において重要であり唯一のスキル

ところで、私は人間関係において重要であり唯一のスキルがあるとしたら「相手のことを心から気にかけ、関心を持つこと」だと考える。これは自分本位から相手本位に意識を変えていくことでもある。そう、ビジネスをはじめとした基盤には他者への関心が欠かせない。

マイク・シャシェフスキーがしたことをシンプルにまとめると、会話した相手の名前と会話の内容を覚えていた。ただそれだけのことだ。しかし、それは相手に対して関心を示す所作でもある。そう「相手のことを価値ある存在」だと認めている。

後に、著者であるマイク・マグラスリンはこう言っている「ビジネスにおいて究極的に重要なのは、どのように相手に価値を与えるかということだ」。まさにマイク・シャシェフスキーとの関わりに彼は大きく影響を受けたのだ。

たかが1回の承認かもしれない。けれども、その承認には人の生き方を変えるかも知れない計り知れない力がある。あなたはこの話をどう思うだろうか?

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この記事の執筆者

アメリカでは伝説的な元トップ営業マンであり、対人関係・影響力の行使に関する第一人者。「21世紀のデール・カーネギー」の異名を持つ。

現在は経営コンサルタント・講演家としても人気を博し、元大統領や著名な政治家からも助言を求められる。2014年には米国経営協会(AMA)からビジネス界のリーダー上位30人の1人に選出されている。

主なクライアントはゼネラル・エレクトリック(GE)、リッツ・カールトン、レクサス、アフラック、MDRT、全米不動産協会等。フォーチュン500社に名を連ねる大企業からも絶大な支持を受ける。

著書はこれまで世界21カ国語に翻訳され、累計発行部数は100万部を超えている。累計20万部の『Endless Refferals』や世界的ベストセラーとなった『THE GO GIVER』などは全米の企業で多く研修マニュアルとして使われている。フロリダ在住。