ボトルネックを歓迎しよう

From 安永周平

ちょっと想像してみてほしい。あなたが夫婦でラーメン屋を始めるとする。最初の課題は何だろうか? やはり味は大事だろう。味がよくなければ売上は伸びない。だから夫婦で美味しいと思えるラーメンを作った。でも、それで売上は伸びるだろうか?夫婦2人は美味しいと思っていても、他の人が美味しいと思わなければ売上は伸びない。だったら、今度は自分たちだけではなく「ほとんどの人が美味しいと思う味にしないとダメだ」と思うのではないだろうか?

1つ課題を乗り越えた。次は…

さて、努力の甲斐あってほとんどの人が美味しいと思うラーメンができた。お客さんも増えてアルバイトを雇うようになった。ところが、思ったほどお客さんが増えなくなった。「なぜだろう?」と考えた。すると気付いた。どうもアルバイトの接客がよくないようだと。じゃあ、どうする? スタッフ教育を考えるだろう。無愛想な接客をしていたり、スピードが遅かったりしていたら繁盛店にはならない。

幸い教育の効果もあったようで、接客やサービスがよくなり繁盛店になった。でも、もっと売上を伸ばしたい。ここでまた「じゃあ、どうする?」と考える。現場に立って働きながら考える。すると「もっと雰囲気のいい店にしたらどうだろう」「お客さんが寛げるお店をつくろう」「サービスデーを作ってみようか」「トイレをもっとキレイにすれば印象がよくなるはず」などなど…色んなアイデアが浮かんでくるはずだ。

このように、ぶつかる問題に対して原因を考え、それを解決するための行動を一生懸命やる。これは人並み外れた才能や発想力がないとできないことではない。経験を積めば誰だってできること。本を読んだり人に相談したりして勉強する…それを積み重ねていけばできるようになることがほとんどだ。一生懸命やっていれば、自然と課題が見えてくる。課題が見えたら課題に立ち向かう自分がいて、その課題を乗り越えようと思ったらアイデアが出てくるもの…

誰にでもできることを一生懸命やる

先日、ジャパネットたかたの創業者である高田明さん初の著書『伝えることから始めよう』を読んでいたらそんなことが書いてあった。高田さんはアイデアマンだとか誰も考えなかったことをやったとか言って褒められることが多いらしいが、全然そんなことはないと。自分に人と違ったことがあったとすれば、いつも目の前のこと、今やるべきことに全身全霊を注いできたのだと。常に自分の200%、300%の力を注いで「今を生きる」を実践してきたそうだ。

他にも著書の中には、マーケティングが強みである自分にとって興味深い「伝えること」について書かれていた。多くの人が伝えた”つもり”になっているだけで”伝わる”に至っていない…と。これには本当に頷いてばかりだったのだが、そんな折に日本経済新聞社が福岡で開催するフォーラムに高田明さんが登壇することを知った。これも何かのタイミングだと思って申込み、先週末に参加してきわけだが…講演は圧巻だった。テレビショッピングの時とは違った伝え方、まさに”伝わる”を体現されていた。

「人生はボトルネックを探し続ける旅だ」

講演の中で印象的だった言葉の1つがこれだ。「ボトルネック」って、どちらかというとネガティブな文脈で使われることが多いが…高田さんはこのボトルネックがあるからこそ課題を乗り越えられるし、人生が楽しくなると言っていた。たとえば、仕事での改善項目を10個挙げてみると「とてもじゃないが全部解決なんてできない!」とパニックになる。ところが、これに優先順位をつけて上位1〜2個に集中して改善を続けると…残りの8個くらいも解消に向かい始めるのだと。

ちなみに、現代最強のマーケターだと言われる森岡毅さんも、このボトルネックを「重心」という言葉で表現していた。多過ぎて複雑に思える問題も、ボトルネック(重心)を改善することで多くの問題が解決に向かうのだと。もちろん優先して取り組んだ問題がボトルネックではないこともあるかもしれない。しかし、それは失敗ではなく「試練」であって、一生懸命にやっている人には仲間が集まるから再度挑戦すればいいのだと。そう、失敗ではなく「試練」なのだと。

「今を生きる」を今から始めよう

私たちはどうしても「自分は◯◯ではないから」「タイミングが来たら」と色んな理由をつけて物事を先延ばしにしがちだ。しかし、どんな状況であっても「今、一生懸命取り組むべきこと」はあると思う。今取り組むべきことは人によって違うが、「何か」に取り組む必要があるのは私たちにとって共通しているのではないだろうか。少なくともこのメルマガを読んでいる向上心溢れるあなたならば。

奇しくもスラムダンクの映画『THE FIRST SLAM DUNK』が話題だ。桜木花道の名言「俺は今なんだよ!!」は、今を生きている人間を象徴するものだろう。後先考えないでやれという話ではなく、今この瞬間にできることに全力を尽くす。講演の中で高田さんが「今を一生懸命やり続けているプロセスこそが成功だ」と言っていた。いい言葉だと思った。さて、あなたはどう感じただろうか? 今を生きている”つもり”ではなく、目の前のことに一生懸命取り組む1週間にしてみないか。私も自戒を込めて今日の話をした。さぁ今週も頑張っていこう。

追伸:
高田さんの著書『伝えることから始めよう』は営業・マーケティングを仕事にしている人は必読じゃないかな。スキルを磨くことも大事だが、それ以上に大切なことが”伝わる”一冊になっていた。喋りや文章がヘタクソでも、相手に伝わるために必要なことが書かれてあったよ↓

 

この記事の執筆者

寿コミュニケーションズ株式会社代表取締役/寿防災工業株式会社代表取締役社長。読者1万人超の当メルマガ『THE GO-GIVER』発行人であり、福岡で42年続く社員53名の防災設備会社 二代目。1982年生まれ。福岡県出身。筑紫丘高校→九州大学工学部卒(修士)

新卒でトヨタ自動車に入りマークXやクラウンのモデルチェンジ、バンパー塗装工場の新設を担当。4年目で退職し半年のニートを経て教育ベンチャーのダイレクト出版へ転職。1通のセールスコピーで累計2万人超の新規顧客を獲得したマーケティング経験は宝。マネージャーとなりメンバーから総スカン喰らった経験も宝。事業部が年商7億となった5年目、独立して寿コミュニケーションズを創業。

WEBメディア事業のお客様からの依頼でDMサポート事業を始めたら、紹介だけで受け切れないほど仕事依頼があり、現在は新規クライアント受付停止中。BtoB無形商材に特化したDM戦略&戦術が強い。「人の命と建物を火災から守り地域の街づくりに貢献する」寿防災工業株式会社で2022年11月1日、代表取締役社長に就任。