From 安永周平
今日から屋内でもマスクは着けなくていい。長らく続いたコロナ禍も終わりを迎えようとしている。お客様の要望でマスクを着けるケースは残るだろうが、少しずつ街にも活気が戻ってくるのではないか。もちろん本当に大変なのはこれからだという人もいるだろう。だからこそ、改めて気持ちを切換えていきたいところだ。
ところで先日、街づくりについて1冊の本を読んでいた。もう何年も前から「地方創生」という言葉が色んなところで叫ばれているが、この言葉は大抵の場合、形骸化していて具体的に何をするのかよくわからない側面がある。「地方創生をやりたい」と言う若い人も多いけれど、じゃあ具体的に何するの?となると、誰が顧客なのかも分からないレベルのファジーな話で終わるケースが多いようだ。だから、先の本に書いてあった言葉は印象的だった。
街づくりにおける顧客は誰か?
端的に言えば「街づくりにおける顧客は主として不動産オーナーだ」とのこと。そして、彼らのためにどんな顧客を想定できるかを具体的に提案できなければならない。つまりは、彼らが持っている不動産の維持管理コストを適正に保ち、空いているフロアに関しては改装して価値を高め、粗利率の高い新規出店による新たな売上をつくり、その不動産が面している道路はできるだけ美化をし活用を促進して、エリア全体を含めた資産価値を高める…といったことだ。
既存不動産のリノベーション事業などは、不動産オーナーの新規投資金額を抑えるだけでなく、そこに入居するテナント側にとっても新築より低コストで出店が可能になるメリットがある。まちに新しい魅力的な商品・サービスを提供するお店ができれば、地域の一般ユーザーも生活を楽しめるようになる。
街を活性化させるために必要なこと
街づくりにおいて不動産オーナーが第一顧客だとすれば、第二顧客はテナントであり、第三顧客は一般ユーザーということになる。第三次顧客まで恩恵を受けられるなら、結果として街全体が盛り上がることを意味する。「街のみんなに」なんてキレイな言葉で顧客を曖昧にしていてはダメで、まずは不動産オーナーに向けてサービスを提供し、その事業が黒字になることが大前提なのだ。
地域に売上をつくり、事業のコストを考えて利益率を高め、地域への再投資につなげていく。それができて初めて「街づくり」「地域活性化」と呼べるのだ。地域経済に変化をもたらし、利益を生み、その取組自体もしっかりビジネスとして成立し、実効性を持つ。街づくりも一般的な商売と同じで、稼がなければ持続できない。二宮尊徳先生曰く「経済なき道徳は寝言」なのだ。
顧客を絞れていないビジネスは負ける
繰り返しになるが、主要な顧客は誰かと聞かれたら時に「子どもからおじいさんまで」なんて言ってたら何も進まない。顧客を絞れていないということは、自分たちが何をしようとしているのか理解できていないことと同義だ。そんな商品・サービスは結果的に誰からも必要とされないものになる。これについて、私たちも自分自身の仕事に対してもう1度問いかける必要があるかもしれない。
安永は11月から福岡を商圏とした防災設備会社の社長に就任し、あれから4ヶ月ほどが経過した。そして今年に入って自分たちの仕事を再定義した。建物に付帯する防災設備の工事やメンテナンスが日々の仕事だが、その本質はいったい何か?と。そこで出た結論は「街づくり」だった。だからこそ、今回の木下斉さんが著書の中で言っていたことはとても響いた。
「街づくり」とはファジーでよくわからないスローガンではいけないのだ。直接的、あるいは間接的に不動産オーナーに価値を提供することで、そこに入居する人たちや、そのテナントに足を運ぶ一般ユーザーの方々まで恩恵を受けることができる。顧客を明確にすることから逃げてはいけないのだなと。そんなことを考えて、改めて会社の「代表あいさつ」を考えた。あなたにとっては関係のない話かもしれないが、よければ少し紹介させてほしい。
建物に安心で快適な空間を創ることで「街づくり」に貢献します
弊社は1980年の創業から40年以上に渡り「安心と安全」をモットーに防災設備のメンテナンス・工事を手掛けながら成長してまいりました。独立系の防災設備会社としては全国でも珍しく、現在もグループ全体で50名以上の社員が在籍しています。そのほとんどが消防設備士をはじめとした国家資格者で、消防設備(警報設備、消火設備、避難設備)はもちろん防火設備、建築設備、特定建築物定期調査にいたるまで「全ての防災設備に対応できる会社」であることが私たちの強みです。
水、電気、空気を供給する設備と同じように、防災設備も建物に必須の社会インフラです。自動火災報知設備やスプリンクラー設備をはじめ、防災設備は万が一の際に「人の命を火災から守るもの」でなければなりません。ところが、電気や水と違って防災設備は普段使用しないため壊れても気付かないケースが多い…だからこそ年2回の消防設備点検をはじめとした定期点検が「消防法」や「建築基準法」で義務付けられています。これら予防安全の重要性をお客様に伝え、サポートすることも私たちの大切な仕事だと考えています。
一方で、防災設備は点検するだけでは不十分です。点検は手段であって目的ではありません。点検後、設備に故障や老朽化などの不良が見つかったら、原因を突き止めて「改修」しなければいけません。点検と改修はセットです。お客様から定期点検を任せていただいている防災設備の不良箇所を改修し、火災が起きた時に防災設備が正常に作動する状態を維持すること。ここまでやって初めて消防法の基準を満たし、最低限の安全が確保されます。さらには消防訓練で実際に消防設備に触れることで、利用者の皆様に防災意識を高めていただくことも必要です。
私たちの仕事は、建物に安心で快適な空間を創ることで「街づくり」に貢献することです。改修こそ、私たちが最も地域社会に貢献できる重要な仕事だと考えていますし、点検で不良が見つかった際には責任を持って改修を提案をいたします。だからこそ、社員は工事に必要な「甲種 消防設備士」の資格を持ったプロ集団を目指していますし、資格者不足が叫ばれる業界の課題解決をリードする会社であり続けたいとも考えています。
技術者が社員として数多く在籍していることで、技術が蓄積されるスピードが上がり組織の対応力も上がります。また、自社だけでなくパートナー企業と協力することで、防災設備の枠を超えてもお客様の要望にワンストップで対応できる…そんな会社を目指しています。ひとりでも多くのお客様に「お願いしてよかった」と言っていただけるよう、社員一同仕事に尽力してまいりますので、今後とも格別のご支援、ご愛顧を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
自分たちの仕事の本質は何か?
私が社長を務める寿防災工業株式会社の公式サイトに「代表あいさつ」としてこの文章を載せた。建設業・設備業の枠にとらわれることなく、建物のオーナーの役に立つことで地域の”街づくり”に貢献する会社でありたいと思う。あなたも「自分たちの仕事の本質は何か?」と改めて考える機会を持つと、仕事への意識や提供できる価値が変わってくるかもしれない。自分たちの仕事を再定義することが、ビジネスそのものを変えるかもしれない。さて、あなたはどう感じただろうか? それでは今週も頑張っていこう。
追伸:
冒頭の地方創生に関する本は、街づくりだけでなく「稼ぐこと」から目を逸らしがちな人には本当に役立つと思う。よければこちらチェックしてみてほしい↓